現場は都内のとある会社。日本人スタッフの説明を、海外からのゲストに訳していた時のこと。元のメッセージは、「お客様が国内のエージェントを通して予約をした際に、エージェントでクーポンを発券します」でした。
Customers make reservations through agents in Japan and...
出だしは好調でしたがここで一瞬詰まりました。(前後の文脈上When(...の際に)は使わずに訳しました。)
「えーと...“発券”て何て言えば良いんだっけ?」
単語担当のコビトさんが「発券」という言葉に捕まったその時でした。表現担当のコビトさんがすかさずフォロー。
「発券という言葉は使わずに、“お客さんがエージェントでクーポンを購入する”にすればいいんじゃない?」と。
彼女のフォローを受け単語担当は探す単語を「発券」から「購入」に変更し、すぐに使う単語を決定。後ろで「発券」のスペースを空けて待ち構えていた組み立て担当も、文章構成を素早く修正。
...and the customers purchase coupons at the agents.
ほんの一瞬詰まりはしましたが、問題なく訳すことができました。ここまで約10行の連携プレーの所要時間、約1秒。さすがうちのコビトさん、ナイスファインプレーでした。
もちろんこの後で時間ができた時に、頭の中で「発券」を使うバージョンの訳も練り直します。単語と表現をチェックして次につなげるのも大切な作業です。ちなみに「発券」を使いオリジナルの通りに訳した場合、
...and the agents issue coupons.
となるのですが、前後の話の流れを加味して考えた結果、「発券」を使わないバージョンの方を使って良かったと思いました。話の主体がお客様だったので。もちろんオリジナル通りに訳す必要のある場合は、そっちを優先します。念のため(笑)
真面目で神経質な単語担当と大らかな表現担当。この2人のこの手の連携プレーには、何度も助けられています。
次回からはまたコビトさんの紹介に戻ります。直接通訳作業に関わらない外野のコビトさんたちもユニークで楽しい子ばかりです。
お楽しみに!
コメントやご質問はお問い合わせページからお願いします。
次の記事:通訳の技術と脳内⑫ 時計係り
前の記事:通訳の技術と脳内⑪ 声に出す