【私が通訳になるまで5】高校留学と学校生活

 

 こんにちは、英語同時通訳者オンライン英語・通訳講師の山下えりかです。  

 

 私の英語歴シリーズ第5回は、高校留学中の学校生活についてです。

 

山下えりか 通訳になる ブログ 05 高校留学

  

 私の通った高校は所謂マンモス校で、とにかく大きな学校でした。アメリカでは16歳から運転免許が取れるため、高校へマイカー登校する生徒も多くいます。生徒の数が多ければ広い駐車場が必要ということで、ショッピングモールかと思うほど広い駐車場が完備されていました。本校舎から体育館へはこの駐車場を横切って行かなければならず、本校舎の正面玄関から最短距離で徒歩で10分はかかりました。ちなみにこれは正面玄関からの話で、移動前のクラスが玄関から離れていた場合、更に時間がかかりました。

 

 面白かったのは雨の日。雨の日は本校舎から体育館まで、スクールバスが生徒を運んでくれたのです。一度に運べる生徒数は限られるので、授業に遅れた時のためにバスには遅延証明付き(笑)日本では考えられない光景に、驚いたと同時に苦笑したのを覚えています。

 

 こんな大きな学校に突然ひとり放り込まれ、最初の一週間はパニックでした。

 

 アメリカでは授業毎に教室を移動するため、まずは教室の場所を把握しなければなりません。そしてとにかく広いので移動だけでほぼ休み時間はなくなりました。慣れるまでは何度か迷子になり、最寄りの教室の先生に助けを求める毎日でした(苦笑)

 

 授業は必須科目と選択科目合わせて8科目あり、英語(日本で言う国語)、アメリカ史、数学、体育は必修でした。私の授業内容はこれに加え、家庭科(栄養学と調理)、キーボード(タイピング)、音楽(コーラス)、ジャーナリズムでした。今にして思うと英語がほとんど分からないのにジャーナリズムって無謀ですね(笑)

 

 登校初日の初授業で、忘れられない出来事が起こりました。

 

 音楽の授業でした。教室に入るなり先生は私を見て言いました。「新入りだね。ちょっと来て。」呼ばれて先生のところへ行くと、何かを出すように言われました。よくよく聞くと、「緑の紙を出して」と言っています。何のことか分からずに困っていると、「持ってないならカウンセラーのところへ行って受け取っておいで」と。

 

 カウンセラーとは各生徒の科目選択の相談に乗り科目登録をしてくれたり、その他学校生活での様々な相談に乗ってくれる人のことです。日本の高校と違って担任の先生がいないので、こういう役職があるのでしょう。

 

 先生に言われるままカウンセラーのところへ行って事情を説明すると、やっと状況を把握できました。授業初日には科目登録票を持って各先生からサインを貰う決まりになっていました。音楽の先生が言っていた「緑の紙」はこれだったのですが、留学生の私の登録票はピンクだったのです。このピンクの紙を授業前にカウンセラーから受け取ってはいたのですが、何をどうするのかの説明がいまいち理解できていませんでした。(トホホ...)

 

 謎が解けて教室に戻りピンクの紙を先生に出すと、「ああ、君のはピンクだったのか」と笑ってサインをくれました。

 

 忘れられない出来事はこの直後。

 

 「その子英語分からなかったの?」と、クラスのどこからか聞こえてきました。

 

 「いや、登録票の色が違ったから分からなかったんだ」と先生が答えてくれましたが、その一言にとてつもない悔しさを覚えました。更に悔しかったのは自分で言い返せなかったこと。どう言い返していいのかも分からなかったこと。「緑じゃなくてピンクだったんだもん!」と言いたくても言葉が出てこなかったこと。ついでにその声の主の言う通り、ある意味では英語が不自由なためにその場で問題解決ができなかったこと。

 

 この登校初日しょっぱなからの「分からなかったの?」の悔しさもまた、その後の私の英語学習熱の原動力となりました。それにしても初日で文字通り右も左も分からず心細かったくせに、これだけ悔しがるとは10代の元気さってすごい(笑)

 

 家庭科もまた、最初の授業がとても印象に残っています。

 

 先生はおっとりとして優しい高齢の女性でした。登録票にサインを貰いながら留学生でまだ分からないことだらけと話すと、優しく微笑みながらこう言いました。

 

 「大丈夫。諦めずに努力を続ければ、ある日突然英語が分かるようになる日が来るわ。」 

 

 語学とはとにかく地道にコツコツ、少しずつ上達して行くもの。ある日突然分かるようになるなんて、そんなことがあるものかと思いました。いくら私を元気づけるためとは言っても、子供だましだと。

 

 ...本当に、子供でした(笑)

 

 ある日突然分かるようになることって、本当にあるんです。でもこれは急に能力がドンと上がる時があるという意味ではなくて、水瓶に少しずつ水が溜り最後の一滴を受けて溢れるように、ある日何かのきっかけでコツコツと積み上げた力を実感できる時があるということなのです。だから諦めずに、日々少しずつ水は溜まっていると信じて努力を続けることが大切。

 

 ただし水が溢れる直前が、一番苦しいものなのですけどね。

 

 迷子になったり勝手が分からなかったり悔しかったりと、とにかくバタバタだった最初の1週間。数年前、この頃持ち歩いていたメモ帳を見つけました。ホストファザーが何かあった時に使いなさいと、自宅の住所、電話番号、ホストファザーとホストマザーの携帯番号を書いて渡してくれたメモ帳でした。ほとんど使わなかったそのメモ帳には、決まったばかりの1学期の時間割と、最初の週に学校でやらなければいけないことのリストと一緒に、こう書かれていました。

 

 「えりかは元気です」

 

 精一杯虚勢を張って自分で自分を鼓舞する、16歳の私の姿がありました。

 

 次回はもう少し、学習面(での苦労)に重点を置いた内容になる予定です。

お楽しみに!

 

 

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