「高校留学と英語の授業2」でも書いた通り、私の通った高校は留学中の単位を認めない方針の学校でしたので、帰国後は1つ年下の学年で2年生をやり直しました。学年が変われば教科担任も変わるので、まずはあいさつ回りと教材集め。
ほとんどの先生方がさらっとした対応だったのに対し、英語の先生だけは違いました。教材のある資料室に向かう道すがら、突然こう言われました。
「山下さん、英語は“上のクラス”だからね。」
私の高校では英語と数学の時間に限り、理系文系それぞれ3組を成績順に上・中・下の3クラスに再編成していました。つまり普段の授業は各組単位で受けますが、英数の時間は3組共通の時間割となっており、その時間だけ振り分けられたレベルの教室に移動して授業を受けるシステムでした。クラスの編成は年に数回あった気がしますが、よく覚えていません。ちなみに留学前の私の英語のクラスは、“中”でした。
「えー!(無理!)」と返すと、
「そりゃ留学帰りだもの、当然でしょ」と。
確かに当然ですね、笑。教材を受け取りあいさつをして帰ろうとすると、引き止められました。
「正直に言うね。君がいるとさ、授業やりづらいのよ。」
あーまぁそりゃそうでしょうねー。でもそうはっきり言わなくてもー。(心の声)
帰国後の留学生は高確率で英語の教師に疎まれるというのは、元留学生の先輩方から聞いていました。こんなことを(笑顔で)私に言って何を考えてるんだこの人はとも思いました。反応に困っていると、先生が続けました。
「だからさ、利用しちゃおうと思って。発音の練習、山下さんやってよ。」
「はい?え?」
「授業で教科書読む練習するでしょ。前に出てやって。任せるから。」
思いもよらない展開でしたが、その率直さがとても嬉しかったです。それから数か月間、授業が完全に受験モードに入るまでの間、英語の授業で発音練習を担当させてもらいました。元々出たがりの性格でしたから人前で何かをすることに抵抗はありませんでしたし、今にもつながるとても良い経験だったと思います。
通訳者は大勢の聴衆の前で仕事をすることが多い職業ですから、舞台度胸があると言うのはとても大切な素質のひとつです。この点において、人前に出るとやたらとテンションが上がる性質の私には、通訳者はまさに天職なのです、笑。しかしそれも実際にそれを試し経験を積む機会がたくさんあってこそ育めるもの。本当に、貴重な経験をさせてもらいました。
さて帰国直後でその時点での英語の成績もよく分からない状態で、留学帰りという“肩書”と先生の意向だけで上のクラスに入れられてしまった私。帰国後最初のテストは、とてもクラスのレベルに見合うものではありませんでした。学年で真ん中より少し上くらいだったと記憶しています。
「留学したからって英語の成績が伸びるとは限らない、むしろ大して期待しない方が良い。」
これもよく聞いた先輩談。「上のクラスだから」と聞いて「無理!」と思った理由はこれです。
せっかく発音練習を任せてもらえたのに、いきなりクラス落ちの危機。やはり留学より辛かったかつての高校生活に逆戻りなのでしょうか。
来週につづきます。
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