逐次通訳と同時通訳の違い

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 こんにちは、英語同時通訳者オンライン英語・通訳講師の山下えりかです。

 

 今回は非常に今更ながら、逐次(ちくじ)通訳と同時通訳の違いについて書こうと思います。

 

 通訳者としてこのブログを書いてきてなぜ今更このトピックなのかと言いますと、先日タクシードライバーの主人からこんなことを聞いたからです。

 

 「お客さんと話してるとね、通訳をよく使ってる人たちでも、逐次と同時の違いが分かってない人が多いよ。」

 

 え...使ってる人でも...?

 

 ...ホントに?(汗)

 

 通訳を使ったことがあるのならその違いくらい当然分かっているものだろうと思っていたのですが、どうやら世間の認識はそうではないそうで。それはつまり私が気づいていないだけで、私の周囲にもこの違いを分かっていない人がいるかもしれないということ。それならばまずはその説明をするべきだと思い、このお題を選びました。

 

 逐次通訳と同時通訳。違いが分かっている人もそうでない人も、ご一読いただけると幸いです。読んでみたら勘違いしていたなんてことも、あるかもしれません。

 

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 まず逐次通訳と同時通訳の、通訳形式の違いから説明します。

 

 逐次通訳とは、話者と通訳者が交互に話す形式です。「通訳」と聞いてこれを思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。逐次通訳では話者が区切りの良いところまで話し、通訳者がそこまでの話を訳す、の繰り返しです。話すのが話者であれ通訳者であれ、一度に話をするのはどちらか片方だけです。

 

 同時通訳とは、「同時」という言葉通り、話者が話すのを通訳者が同時に訳す手法です。通訳者は話者の話を聞きながら、ほぼ同時に訳出も行います。「ほぼ同時」と表現する理由は、通訳者は先に話を聞いてから訳すので、通訳のタイミングは少しだけ遅れるからです。通訳者は話者の話をワンテンポずらして同時進行で訳して行きます。つまり同時通訳の場合、話者と通訳者双方はどちらも話している状態になります。

 

 また特殊な設備を必要としない逐次通訳に対し、同時通訳には専用の機器が必要な場合があります。大きな会場の場合、通訳者が同時通訳をするための機械を設置したブース(小部屋)が必要ですし、大きな会議室程度の規模なら簡易機器を使用する場合もあります。通訳者はヘッドホンから話者の話を聞き、マイクを通して通訳をします。いずれの場合も聴衆は手元のイヤホンとレシーバーを使い、通訳を聞きます。疲労度の高い作業のため、15分毎に別の通訳者に交代するのが一般的です。通訳作業をしていない通訳者はその間、訳している通訳者の隣でメモを取り、サポート役に回ります。

 

 もうひとつ、ウィスパリングと呼ばれる同時通訳の方法があります。これは聴衆全体の中で通訳を必要とする人が1~3人程度と少数で、その人たちのためだけに通訳の時間を取れないという場合に用いられる方法で、通訳者はヘッドホンなしで直に話者の話を聞きながら、聞き手の側に寄り、耳元で小声でささやくように通訳をします。このため、ウィスパリング(ささやき)と呼ばれています。(簡易機器を使用する場合もあります。)

 

 ちなみに同時通訳って聞いてみたいけどどこで聞けるのか分からないという人には、CSやスカパー等で観られる、CNNやBBCをお薦めします。我が家のCSはBBCが入らないのでBBCの詳しい時間は分かりませんが、CNNは深夜0時から朝7時まで以外の時間帯なら、いつでも同時通訳を聞くことができます。もしくはYouTubeあたりで探せば同時通訳の動画もあると思います。興味のある人はぜひ聞いてみてください。

 

 余談ですが、逐次通訳は基本的に丸1日1人でも対応できますが、同時通訳の場合は先述の通り15分交代で行われるため、半日で2人、1日なら3人手配するのが一般的です。

 

 さて、逐次と同時についてよく聞かれることがあります。

 

 「やっぱり逐次より同時の方が難しいんでしょ?」

 

 これには半分YESで半分NOと私は答えます。

 

 半分YESの理由はやはり、聞きながら訳し、同時に(聞くのとは別言語で)話すことの難しさという点で、同時通訳の方が難しいからです。また基本的に通訳学校では逐次通訳の訓練を終えてからでないと同時通訳の訓練は受けられないので、同時通訳の技術は逐次通訳の技術の上にあるものと考えていいと思います。

 

 半分NOの理由は、逐次通訳と同時通訳に求められるものの違いにあります。説明した通り同時通訳は聞きながら考えながら話すという超高負荷な技術ですから、完璧な訳を求めることは非常に困難です。そのため同時通訳の際には、情報の8割を訳出することが基準とされます。もちろんそれでも十分難しいのですが。

 

 更にウィスパリングや簡易同時通訳の場合、話者の話をヘッドホンを通してでなく生の耳で直に聞かなければならないことがあります。その場合周囲の雑音が邪魔になることが多いため、そのような状況では情報の6~7割を訳出できれば良しと考えられています。これに対し逐次通訳は、一言一句完璧に記憶し、100%の情報を過不足なく完璧に訳し伝えきることを求められます。そのためある部分では同時通訳よりも逐次通訳の方が難しいとも言えるのです。

 

 ですからしっかりと情報を伝えたいのなら逐次通訳、多少情報漏れが出ても時間を短縮して沢山話をしたいのなら同時通訳と、目的によって使い分けが必要です。あとは予算との相談も必要ですね。

 

 ここまでざっくりですが、逐次通訳と同時通訳の違いとそれぞれの特性についてご紹介しました。これを機に少しでも通訳者への理解を深めていただけたら嬉しいです。

 

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