大学の新学期のために渡米したのが8月中旬。その1ヶ月後の9月中旬にアパートを引き払って完全帰国。自分でも想像していなかったことでした。あの1ヶ月間、何か不思議な力に突き動かされていたような気がします。それが何だったのか、今なら分かるような、今でも分からないような。
さてバタバタの1ヶ月でしたが、帰国したからと言ってゆっくりしてはいられません。通訳学校の新学期は10月からだったので、申し込みの期限が迫っていました。帰国後すぐにレベルチェックの予約を取り、東京のサイマル・アカデミーへ行きました。
通訳学校と言うと、サイマル、インター、ISSが大手3校と言われています。この中で私はかなり早い段階から、通うならサイマルと決めていました。その理由は、当時あるSNSで情報収集のために参加していた通訳者のグループで、ある書き込みを見たからです。
ネットという世界は怖いもので、相手の顔が見えないからかやたらと攻撃的なことを書く人が多くいます。良識ある通訳者の集まりでそんなことはないと思っていたのですが、そのグループでは意地悪なコメントをする人もかなりの数いました。
その中で「通訳学校に通うならどこがいいでしょうか?」という質問がありました。それに対し不要な情報を付け加えて質問者がやる気をなくすようなコメントをする人がいたり、そんな書き方をしなくても、というコメントを書く人がいたりする中で、ある方の書き込みが目に留まりました。
「通訳ならサイマルというプライドがあります。」
先述の通り意地悪な人たちもコメントをしていますから、当然彼らにも見えています。普段なら鬼の首を取ったように出る杭を打ちまくる人たちが、誰もそれに触れませんでした。それは暗にその掲示板を見ていた人たちがそのコメントを認めたことにもなります。サイマルという名にはそれだけ言っても叩かれない確かな裏付けがあるのだと、口の減らない意地悪な人たちさえも黙らせるほどの実力があるのだと理解しました。
「通訳ならサイマル」
それならば私が目指すならここだと思ったのは、まだ通訳のことを誰にも話していなかった夏休み前のことでした。
さてここでレベルチェックと通訳コースについて簡単に説明しておきます。と言っても今では私が通っていた頃とはレベル分けもコース構成も変わっているので、参考にしかなりませんが。
当時サイマル・アカデミーに入るためにはまず、英語のレベルチェックテストを受ける必要がありました。ここでレベル1~7に振り分けられ、通訳コースに入れるのはレベル7(現Advanced2)の生徒だけでした。サイマル・アカデミーには通訳コースのほかに、翻訳コースや実践英語コースという英語を勉強するコースもありました。入学時にレベル7に届かなくても、実践英語コースで英語レベルを上げれば通訳コースに入ることが可能でした。
当時のレベルの目安は、TOEIC860以上がレベル6~7とされていました。私がその2か月前に受けたTOEICの結果は840でしたから、良いところレベル6からのスタートだと思っていました。
ちなみにレベル7(Advanced2)の当時の基準はこうでした。
“どんな話題についても、ネイティブスピーカーと不自由なくやりとりができる。自分の意見をまとまりのある文章で、流暢に、明確に表現することができ、国内外のビジネスシーンにおいて、不自由なく英語でコミュニケーションをとることができる。”
通訳コースは下から、準備科(現通訳I・半年)、入門科(現通訳II・半年)、通訳科(現通訳III&IV・前後期で一年)、同時通訳科(現会議通訳I&II・前後期で一年)という構成でした。ちなみにカッコの中の期間はその科の授業が行われる期間であり、進級には学期末の進級テストに合格する必要があります。不合格なら次の学期も同じ科をやり直しです。
ちなみに現在ある「通訳準備」は、私が入学した時には無かったクラスです。私が入学して少しして準備科の下にレベル6から受講できる「予備科」というクラスができていて、それが今は「通訳準備」と呼ばれているクラスです。
レベル7の判定を受けた生徒には、当時の通訳コースの一番下のクラスである「準備科」に入る資格が与えられました。またレベルチェックの後に通訳コース向けのテストを受けて、その実力次第では、準備科より上の科に飛び級で入れることもありました。
レベルチェックテストには2つのテストがあり、1つはテープを聞いて聞いた内容をそのまま書き出すディクテーションと呼ばれるもの、もう1つはネイティブ講師との面接です。行ってみて突然聞かされたので面喰いましたが、ディクテーションは英語力を見る上でとても有効な手段です。リスニング力、語彙力、理解力、文法、スペリング、全てを一度に見ることができるからです。
恐る恐る受けたレベルチェックテスト。結果はレベル7と判定されました。テスト後のカウンセリングではこう言われました。
‟貴女の英語は一般的に言えば申し分無く完成度の高い英語だけれど、プロとしての話をするのであれば、正確さとフォーマルさに欠ける。今のレベルでも通訳コースには入れるけれど、英語力自体に弱点がある場合、それで躓けばそれ以上の通訳になるのは難しい。時間があってより高いレベルを望むのであれば、まずは英語力自体に磨きをかけて通訳コースに進むのが最善です。”
この「フォーマルさ」という点はその後、通訳コースに入ってからもかなり長い間、
私を悩ませました。
何はともあれこういう結果だったので、そのアドバイスに従い、実践英語コースレベル7のクラスからスタートすることを決めました。
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