こんにちは、英語同時通訳者でオンライン英語・通訳講師の山下えりかです。
今回はサイマル・アカデミー通訳コース準備科(現通訳I)後半を、メモ取り演習を中心に振り返ります。
中間試験を終えてからは、完全にメモありの通訳演習になりました。前回も説明した通り、通訳のメモとは記憶の補助のためのものです。そのため自分にだけ分かれば良く、メモのスタイルは人により千差万別です。それでも一応、メモ取りを始める時に簡単な指導がありました。
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メモ取りに関してサイマルアカデミーで受けた指導の内容はこちら。
- メモを取る時は頭に残りにくい固有名詞と数字優先。特に数字は絶対に取ること。
- できるだけ文字数を減らすために、記号を使うこと。
- できるだけターゲット言語(訳出する言語)で取るのが望ましい。(by小松達也先生)
全員に当てはまる指導はまあこれくらいが限度です。通訳者のメモは1ページを縦半分にして、短い横書きを縦に進めて行くのが基本です。用紙は縦めくりを使う人が多いようですが、横めくりのノートを使う人もいます。とにかく自分がやりやすいスタイルを見つけることが大切です。
ちなみに私は、B5サイズのコピー用紙(お徳用)をバインダーに挟んで縦めくりで使っています。
そんな感じなので他人のメモを見てもあまり参考にはならないのですが、どんなものか感じだけでもお見せするために、私のメモの写真を載せます。ちなみにメモの基になっている文章は次の通り。
“先週自身の政治資金問題について第三者の弁護士による調査結果を公表した舛添都知事。しかし都民の多くは納得しておらず、知事の辞任を求める声が高まっています。また6月13日の集中審議を前に下村総理特別補佐は「不信任案にノーとは言えないんじゃないかと思いますけれども。今のまま、もし行ってしまったとしたら」と述べました。”
英語でメモを取った部分が分かりやすいように、訳も載せておきます。
“Last week, regarding his political fund issue, Tokyo Governor Masuzoe disclosed results of scrutiny conducted by third-party lawyers. However many of Tokyo citizens are not satisfied with the results and their voice to seek his resignation is growing louder. Additionally, an intensive deliberation is scheduled to be held on June 13th. Being aware of that, Mr. Shimomura, the special adviser to the Prime Minister mentioned that he thinks LDP members of the Tokyo Metropolitan Assembly will not be able to say “NO” to a no-confidence motion against the governor if he keeps doing what he has been doing.”
私の場合、メモを取りながら瞬間で訳が浮かぶ単語はターゲット言語(この場合は英語)、瞬間でさっと浮かばないものは元言語で取るのが癖のようです。あとは日本語で取った方が早いもの、英語で取った方が早いものはそれぞれ早い方の言語で取ります。画数の少ない漢字は便利に使い、画数の多い漢字は片仮名や平仮名、または対訳の英単語の略字で対処します。
もちろん、準備科当初からこんな風にスタイルの決まったメモが取れていたわけではありません。使う記号の意味やその使い方も含め、何度も繰り返しやりながら形になって来たものです。
中でも私が便利に使っている記号をいくつかご紹介します。
これはアルファベットのYを崩したように見えますが、くちびるの記号です。「声」や「言う」等のメモに使います。くちびるマークにedを付けるだけで過去形にもできるので便利です(笑)
これは「but」や「しかし」等、逆説の接続詞に使います。なぜこれが逆説マークなのか?私もよくは分かりませんが、私の先生が使っていたマークをそのまま真似しました。通訳業界では割とポピュラーな記号だと思います。
あとは番外編で、こんなのも。
会社。
社会。
意味は大きく異なりますが、漢字で書くとどちらも似ています。英語だとcorporationとsocietyです。「会」とだけ書いたらどちらか分からなくなる可能性があります。漢字で全て書くには画数が多すぎます。とは言え英語で書くのも長いので、いつの間にかこうなりました。
他にもいろいろありますが、それはまた機会があればご紹介します。
こんな風にメモを取りながらの通訳演習。最初のうちはやはり、メモを取るのに気を取られて聞き漏らしが出たり、まだまだ発展途上だったリテンションに頼ろうとしてはメモが取れずに忘れたり、なかなかうまくいきませんでした。ここから長い時間と度重なる反復練習と現場での実践を経て、リテンションの強化とメモの簡略化、そして耳とメモのバランスを身に付けて行きます。
とは言え未だ模索中な部分も。通訳の勉強に終わりはありません。
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