【私が通訳になるまで19】静岡みかんと初仕事1

 

 こんにちは、英語同時通訳者オンライン英語・通訳講師の山下えりかです。

 

 今回はサイマル・アカデミー通訳コース準備科修了から、通訳者としての初仕事の前日までを振り返ります。

  

 準備科での授業内容は、これまで見てきた通り。後半はメモあり通訳演習がスタートし、前半よりも多少基礎演習が減りましたが、基本的な授業の流れは変わりませんでした。そして迎えた学期末の進級試験。結果は12人中、私とKさんを含む6人が進級となりました。まずは第一関門突破です。

 

 進級試験と結果発表が終わり、最終週の最後の授業の日の前夜、突然あるメールが届きました。仕事の依頼です。以前「どうせ仕事は来ないだろうけど」とネットで登録したエージェントからでした。場所は静岡市内、内容は“青島みかんに関する会議とレセプション”とのこと。

 

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 興奮と不安でドキドキしました。

 

 静岡に生まれ育ち、みかんは常に最も身近な果物でした。場所も市内。初仕事としてはこれ以上望めないほどの好条件。完全なホーム試合です。また時期も最高でした。準備科からの進級試験に一発合格した直後で、実戦で実力を試したいとウズウズしていたところでした。

 

 しかし当時の私は当然のことながら、訓練でしか通訳を知りません。実際の仕事の経験が無いことはとても不安でした。

  

 やってみたい、でも怖い。

 

 そこで翌日、数人のクラスメイト達と最後のランチに行った際に相談しました。すると全員が声を揃えて、「絶対やるべき!」と答えてくれました。

 

 当然通訳・翻訳経験者もいます。先輩の彼女たちが「エリカちゃんなら大丈夫」と言ってくれたことで、決断できました。

 

 帰宅後すぐにエージェントに返事をして仕事を受けることが決まりました。しかし、事前資料は皆無とのこと。クライアントの連絡先は教えてくれて直接連絡を取ってOKとのことだったので、すぐに電話をしてクライアントと話しました。

 

 クライアントは私が市内出身と知り安心したようでしたが、農家出身ではないと聞くと少し残念そうな声になりました。それはもちろん、専門知識を持った人がいいに決まっています。とは言えいくら静岡でもピンポイントでみかん農家出身の通訳者というのは難しいです。気持ちは分かりますが(苦笑)

 

 さて、私にとってみかんはたしかに身近な果物でしたが、通訳の仕事となれば話は違います。ただ美味しいと食べる消費者目線ではなく、専門家並みの知識が必要です。

 

 “事前準備なしで仕事をしてはいけない。資料が出なくてもできる限りの下調べと準備をして行くこと。”

 

 まだ準備科を修了しただけとは言え、その姿勢は日々先生方から教え込まれています。絶対に失敗したくないデビュー戦。事前資料なしでどうしたものか...と悩む間もなく、奥の手を使いました。

 

 一緒に暮らしていた祖母です。(健在です。)

 

 祖母は農協に定年まで勤めた人で、(良く言えば)面倒見がいい(またはお節介な)性格ゆえに、退職後も農協の職員さんに顔のきく人でした。事前資料が無いと聞いた瞬間から、祖母の顔が頭にありました。また私の地元は地域のJAの本所と町の支所が並んで立つ場所だったので、より高度な知識を持つ専門家に話を聞きに行ける環境でした。そこで祖母に頼んで本所の柑橘課にアポを取ってもらい、話を聞きに行きました。

 

 柑橘課の責任者さんは様々な資料を用意して私を迎えてくれました。そして資料には書かれていない青島みかんの特性や歴史、育てる時の留意点等、とても丁寧なレクチャーをしてくださりました。

 

 帰宅後は聞いた話を自分なりに整理し、これと思った専門用語の単語リストを作りました。事前資料なしの状況下では、これ以上ないほどの準備ができたと思います。

 

 その後もいただいた資料と自分で作った単語リストを何度も見直し、ゲストがカナダ人ということでカナダ英語の音源をネットで探してシャドーイングをし、来たる本番に備えました。

 

 

 

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