こんにちは、英語同時通訳者でオンライン英語・通訳講師の山下えりかです。
先日ブログ記事「トランプ発言とアメリカの言語差別」のコメント欄にて、英語の発音改善の方法についてご質問をいただきました。
その回答として私なりに日々「これが大事」と思っているものを並べたのですが、何となくそれだけでは書き足りなかったのと、せっかくなので多くの人の目に触れる形にしたいと思いまして、今回はその時の私の回答をベースに、英語の発音改善について取り上げることにしました。
まずは私の英語の自己紹介ビデオをご覧ください。
これを観て「なんだこの程度」「こんな奴に習う発音なんてない」「自分の方が上手い」と思った方は、どうぞここで読むのを止めてください。私のレベルはこの通りですので、これ以上のことは期待しないでください。もちろん効果は人それぞれですから私よりもずっと上手になる可能性はありますが、基本的には教える側は自分の実力の範囲内のものしか教えられないと思いますので。
以前からブログにも書いてきた通り、私が英語で一番自信を持っているのは発音とリズムです。しかしながら通訳訓練時代はその強味が活かせず、悶々としていました。通訳訓練は通訳技術を磨くための訓練なので、発音は良いに越したことはないけれど絶対条件ではないという扱いだったからです。
それでも訓練から一歩外に出て仕事となれば話は違います。発音の良さは他の通訳技術と同じく、信用に繋がります。特に第一印象は何よりも発音の良し悪しに左右されます。通訳でなくとも英語を使う機会があると言う方は、身に付けておいて決して損はない技術です。
先に断っておきますが、このブログ記事はあくまでも「発音」のみにフォーカスした内容です。基本文法や単語の勉強、またリスニング力の強化等、発音に力を入れる前にやるべきことはたくさんあります。ですからここに挙げるものだけやれば英語ができるようになるなどとは、決して思わないでください。むしろこれらの内容は、それなりに英語の基礎力がある人向けです。基礎力に不安がある人は、まずは中学文法のおさらいから始めることをお勧めします。
関連記事:【学習法】英語&通訳の勉強方法まとめ
ちなみにここまで私の英語歴を読んでくださった方はご存知だと思いますが、私の英語の発音は高校留学中のホームステイで形作られたものです。そんな恵まれた環境で発音を身に付けた私に発音改善が語れるのかと思う方もいるかもしれませんが、そこは騙されたと思って読んでください。この中には私が手探りで覚えたことを整理してじっくり学べる方法や、私が中学生時代から忠実に守って来た基本、またサイマル・アカデミーに入ってから更に発音に磨きをかけた練習方法等が含まれています。
それでは始めます。
私が英語の発音改善に効くと考える練習方法は、大きく分けて5つあります。
1.フォニックス
2.オウム返し
3.一音一音の発音を意識する
4.音読
5.シャドーイング
それぞれ詳しく説明します。
1.フォニックス
これはアルファベット毎の細かい発音の練習方法です。所謂「エー、ビー、シー」ではなく、「ア、ブ、ク」と実際に単語の中で使用する音を練習します。
なぜ私がこんなものを知っているのかと言うと、過去に児童向けの英会話講師をしていたことがあり、その教室での英会話教育の柱となっていたのがこのフォニックスだったからです。そのため私自身はフォニックスで発音を勉強をした経験は無いものの、この学習法の完成度の高さはとても信頼しています。フォニックスは私がホストマザーの無意識&スパルタ発音矯正で覚えた音たちを、丁寧に分かりやすく教えてくれる、優れものなのです。
これは英語の発音の基礎を身に付けるにはとても有効な手法です。綺麗な英語の発音を目指すのであれば、急がば回れ。まずはここから始めることをお勧めします。
フォニックスが実際にどのようなものかは下記練習用動画をご覧ください。またフォニックス&発音改善講座ではひとつひとつの音の特性や出し方の解説、受講生の発音の評価など、より細かい指導を実施しています。
2.聞く→真似る のオウム返し
単語または文章レベルで、何度も同じものを聞いてその発音を真似る方法。
中学や高校の授業でやりましたよね。英語の先生がよくやる、“Repeat after me”です。大切なのはネイティブ発音の音源を使い、ネイティブと同じ発音ができるまで繰り返しやることです。
また文章レベルでオウム返しをやる際には、単語の発音やアクセントだけでなく文章全体の強弱や音の高低にも気を付けましょう。英語の発音は単純に単語の発音が良ければ良くなると思っている人が多いようですが、綺麗な英語を話すのに必要なのは、発音、リズム、音程です。
発音とは一音一音、またはそれが連なった個々の単語の発音。リズムとは単語を集めてできる文章を声に出す時のそれぞれの単語の強弱。音程とは文章の中でリズムに合わせて声のトーンが上下すること。
日本語は英語に比べて極端に平坦なため、日本人が英語を話す時に難しいのは実は発音よりもリズムと音程です。ここを意識してオウム返しの練習をすると良いでしょう。
3.常に口の形、舌、唇、歯の使い方を意識する
英語特有の音の出し方は、知識としては知っているものが多いと思います。例えば「th」の時には歯を少し開けてその隙間に舌を軽く押し出す、「f」の時には上の歯で下唇に触れる、「r」は舌を巻く等。これらを一音一音常に意識して発音するだけでも、発音は変わってきます。
私のホストマザーはこれを少しでもおろそかにすると聞き取ってくれない人でしたから、彼女と話をする時はとにかくひとつひとつの音に神経を尖らせました。ちなみに私は今でも一音一音を意識しています。常に少しでも綺麗な発音で伝えたいからです。
4.音読
音読は初級から上級までそれぞれのレベルで役に立つ練習です。発音はやはり使うことで上達するものですから、一番は誰かと話すことですが、それが難しい場合や話す量が足りない場合には音読が有効です。
使用する文章は自分のレベルに合うと思うものや興味のあるものを探すのも良いですし、自分で文章を作り読み込むのも良いと思います。サラサラっと言えるようになりたい内容やフレーズをきちっとした文法で文章化し、それを何度も読み上げて暗記するほど練習する。するとそれを言いたいと思った時に体が反応してくれます。これにはもちろん、きちんとした文法力や単語力も必要です。そちらの勉強も頑張りましょう。
ちなみに通訳訓練のひとつとしても使われる音読ですが、通訳者の音読の利用法は、自分の発音のチェックのためであったり、筋トレのように口を動かすためであったり、知識を増やすためであったりと色々です。音読はこれが全て一度にできる、効率的な訓練法でもあります。
5.シャドーイング
シャドーイングは通訳者の訓練方法と思われがちですが、現在語学学習にも広く使われている手法です。一定の長さのある音源を流し、歌の輪唱のように一拍遅れて同じ内容を繰り返しながら追っていくという練習法です。
このメリットはネイティブの発音とリズムに乗りながら練習ができることですが、聞きながら話すというのは最初は難しいことなので、やるならまずは初心者向けのシャドーイング教材を購入することをお勧めします。
私はサイマル・アカデミー通訳準備科に入った当初から、ヒラリー・クリントン氏のスピーチを使って毎日練習をしていました。彼女の美しい英語に憧れて憧れて、スピーチを暗記してしまうほどやりこみました。その結果、色々と自己流だったサイマル・アカデミー通学前よりも、発音、リズム、音程、間の取り方を含め、「人に聞かせる英語」になったと自負しています。
英語指導や通訳講座の生徒さん達から「シャドーイングのお手本を聞きたい」との要請を多くいただいたので、お手本動画を作りました。シャドーイングをやる際の参考にしてください。
以上、私がお薦めする英語の発音改善法をご紹介しました。
どれもそれほどお金をかけずに、または無料でできるものばかりです。英語の発音を良くしたい、綺麗な英語を話したいと思う方、ぜひ参考にしてください。
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