コミュニケーション後進国日本 【笑い方編】

 

 こんにちは、英語同時通訳者オンライン英語・通訳講師の山下えりかです。 

 

 2007年に幸運としか言えないような通訳の初仕事の機会をいただいてから、今年で通訳歴10年になります。初仕事から今まで、様々なクライアントと仕事をしてきました。楽しい仕事も大変な仕事もありましたが、どれも大切な経験です。経験した仕事の数が増えるごとに、通訳という仕事を益々好きになっています。ただその一方で、初仕事のその日からずっと危機感を抱いてきたことがあります。

 

 それは、日本がコミュニケーション後進国であるということ。これは英語力の問題ではありません。英語ができないことは通訳を使ってカバーできます。しかし通訳を使うだけではカバーできない、本人のコミュニケーション能力の欠如が多く見られます。

 

 「日本人はシャイだから」

 「日本文化は独特だから」

 

 20年前はそれで済まされたことも、もうその言い訳は通用しない時代になってきていると強く感じます。そして私が初めて現場で危機感を抱いたその日から10年間、その問題がほとんど改善されていないことに、私は焦りすら感じています。

 

 今回から数回に分けて、国際コミュニケーションの媒介者である通訳者のこの目に映る「コミュニケーション後進国日本」の問題点と正すべき姿勢についてお話しします。

 

【ここがダメだよ日本人 - 笑い方編】

 

 私と同世代以上の方になら伝わるでしょうか?ゾ〇ホン氏が大活躍していたあの番組のパロディ風にしてみました(笑)

 

 日本人に不慣れな外国人をとても困らせるのが、「困った時に笑う」日本人の癖です。

 

 ある商談の際、海外企業側が日本側に少し強引な値下げを要求しました。そこにいた10名ほどの役員は皆で顔を見合わせ、「それはなぁ~」と笑いました。その時海外企業側に座っていた私の耳に、ゲストのヒソヒソ話が聞こえてきました。

 

 「彼らは何で笑ってるんだ?通訳間違えたんじゃないのか?」

 

 そう、この「困った笑い」は不要な誤解を高確率で招きます。日本人同士では通じても、外国人には通じません。特に大事なビジネスシーンでは最も気を付けるべき悪癖です。

 

 同じ「笑う」についてもうひとつ指摘したいのは、やたらとヘラヘラ笑うこと。

 

 初対面の挨拶をにこやかにやろうという気持ちは分かりますが、最初から最後までずっと笑うのは不自然です。コミュニケーションにとって笑顔はとても大切な要素ですが、いわゆる日本人のヘラヘラ笑いと英語圏の人たちの笑顔は異なるものです。例えば初対面の挨拶に必要なのは良い第一印象を与えるための「ニカッ」とした笑顔です。歯を見せる笑顔が好ましいとされています。またこの時に適度な強さで握手をしながらしっかりと相手の目を見ることも重要です。笑顔と同じくらい、この「相手の目を見る」が苦手な人も多くいます。

 

 笑う以外にどんな表情をしたら良いのか分からないと言う人もいるかもしれません。そういう時はあまり表情にこだわらず、相手の目を見てよく相手の話を聞くことです。そうすれば自然と必要な表情になるはずです。

 

 「笑う」悪癖の最後のポイントは、「分からないから笑ってごまかす」こと。

 

 これは日本人同士でもやってはいけないことですね。「分からないから」で笑われると、相手はその人が理解できているのかそうでないのか判断ができません。話をしている相手に不安を与えるだけでなく、コミュニケーションそのものが成立しなくなってしまいます。相手が日本人でも外国人でも、これは絶対にダメです。

 

 「笑う」に関して日本語には実に多くの言葉があり、多彩な表現方法があります。これは日本の文化が育ててきたものですから、何もそのすべてを捨て去るべきと言っているのではありません。しかしそれはこの小さな島国の中でのみ通じるものであると認識することが、円滑な国際コミュニケーションへの第一歩なのです。

 

 つづきます。

 

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