こんにちは、英語同時通訳者でオンライン英語・通訳講師の山下えりかです。
今回はコミュニケーション後進国日本の問題点を取り上げる、【ここがダメだよ日本人】の第2弾。前回の【笑い方編】に続き、今回は【会話中編】です。国際的なビジネスシーンで日本人がついやってしまいがちな会話中の癖を例に挙げ、その改善方法を考えます。
英語のコミュニケーションに不慣れな日本人がやりがちな会話中の悪癖の一つ目は、「相手の話を最後まで聞かない」こと。
こんなケースが代表的です。
通訳者が訳している最中に話の内容を自分なりに予想し、「分かったから通訳早く終わらないかなー」とイライラムード全開で、適当な相槌を打ちながら通訳を全く聞こうとせず、通訳の最後の言葉に被せるように話を始める人、または我慢できず通訳を遮って話し始めてしまう人。こういう人に限ってちゃんと聞いていなかった部分の話になると通訳者に聞き直す傾向にあります。
または英語がある程度理解でき、知っている単語から勝手なストーリーを作り上げ分かった気になってしまい全く通訳を聞こうとしない、または英→日は通訳させずに「自分の日本語だけ英語に訳せ」と日本語で話し始めてしまう人。作り上げたストーリーが話の内容と完全一致していれば問題はありませんが、なかなかそうはいきません。大抵の場合筋違いなストーリーを作り上げて話がチンプンカンプンになってしまうか、前後の文脈が分かれば間違えないはずの単語の解釈を誤り、「え?こう言ったよね?」と通訳者に聞いて「いいえ、あれはこういう意味です」と通訳者が解釈を正す、というやり取りに繋がり、その結果かなりの時間をロスします。
それでも最後まで通訳を聞く場合はまだ救いがありますが、見切り発車してしまう人の多くは相手がまだ話している最中に口をはさんでしまいがちです。これは特に英語のコミュニケーションにおいては最悪のマナー違反です。
ご存知の通り、英語圏にはディベート文化があります。ディベートとはあるテーマについて賛成反対それぞれの立場で2手に分かれ、討論をすることです。ここで重要なのはこの目的が自分が勝つことでも相手を負かすことでもなく、相手を「説得する」ことであることです。ディベートは口喧嘩ではありません。いたずらな揚げ足取りもマナー違反です。そして積極的に話すこと以上に、よく話を聞く姿勢が求められます。ディベートはどちらがより論理的に相手を自分の意見に納得させるかが重要視される知的なコミュニケーションのひとつであり、英語圏の論理的なコミュニケーションを支える基礎なのです。
このディベートが根付く英語圏では自分の考えを発信するのと同じくらい、相手の話を聞くことが大切と考えられています。そのため相手が話している最中は黙って相手の話を聞くというのがルールです。このルールを知らずに無視する日本人は実に多く、その度に表情に不信感を滲ませる外国人を何人も見て来ました。
日本人同士のコミュニケーションにおいて「人の話を遮って話す」がある程度容認されているのは、前回の「英語力=英会話力ではない」でも触れた通り、日本語が「空気を読む言語」だからです。話を遮られた側が一歩引いて譲ることが暗黙のルールになっている部分があるからだと感じます。だから「声が大きい人の独り勝ち」のような状態にもなりやすいのでしょう。
この問題の改善方法は言うまでもありません。ディベートに基づく英語コミュニケーションのルールを理解し、相手が話している間は聞き役に徹することがマナーであると自覚することです。
次は、「分からないところを聞き直さずにそのまま流す」という悪癖です。
これをやるのは英語力に多少の問題がある人で、「何度も聞き返すのは恥ずかしいから」と考える人が多いようですが、恥ずかしいと感じるポイントが完全にずれています。本当は分かっていないのに分かったふりをして後で全然わかっていなかったことが露呈することの方が、ずっと恥ずかしいことです。
分からないところを分かるまで質問し説明してもらうことは恥ずかしいことでも何でもありません。もちろん、何度繰り返してもどうしようもないほど英語力が不足している場合は通訳者を入れるなど別の方法を考えなければなりませんが、分からない箇所を聞き返すという作業は相手の話をしっかり聞いている、聞こうとしているという意思表示になります。自分が話し手だった場合、どちらのケースの方が相手を信用できるのか。考えるまでもありません。
この悪癖克服のために大切なのは、「分からないところは分かるまで聞く」ことと、「何が恥ずかしいことなのか」を正しく認識することです。
以上、【ここがダメだよ日本人・会話中編】でした。
つづきます。
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