先日、Twitterで何気なく投稿したつぶやきに思いがけず多くの反響をいただきました。私はブログの更新や開講スケジュールのお知らせ以外ではこれまでほとんどTwitterを使用しておらず、たまにそれ以外でつぶやいても「いいね」は多くて20件ほど、リツイートなど片手で足りてしまうほどしかありませんでした。しかしながらこの投稿には実に900件を超える「いいね」と400件近いリツイートをいただき、驚いたのと同時にとても貴重な機会となったので、今回はこのつぶやきについてお話しします。
下記がそのツイートです。
英語のプロは口を揃えて「文法は大事」と言うのに、「英語に文法は必要ない」と言うのは大抵、英語ができない人、苦手な人、失敗した人、もしくはそういう人達を食い物にする金儲け主義者達。彼らは何の根拠があって成功者の体験談を否定するのか理解に苦しみます。
— 山下えりか@英語・通訳講師&同時通訳者 (@e_yama_tsuyaku) November 4, 2018
これはプロ野球選手に向かって「キャッチボールできなくてもプロになれますよね」って言うのと同じくらい愚かなことだと一人でも多くの人に気づいてほしいです。
— 山下えりか@英語・通訳講師&同時通訳者 (@e_yama_tsuyaku) November 4, 2018
賛同・批判含め様々なご意見をいただきました。読んでいて嬉しかったのは賛意のコメントだった一方で、勉強になったのは批判的なコメントでした。何気ないつぶやきだったとは言え、確かに少し表現に工夫が足りなかったなと感じましたので、「こうしていればよかったかも」と後で思いついた修正版をここに書き残しておきます。
“自信を持って使える英語の習得に成功した人達は口を揃えて「文法は大事」と言うのに、「英語に文法は必要ない」と言うのは大抵、英語ができない人、苦手な人、失敗した人、もしくはそういう人達を食い物にする金儲け主義者達。彼らは何の根拠があって成功者の体験談を否定するのか理解に苦しみます。”
“職業柄様々な人から面と向かって「英語話すのに文法とかいりませんよね」と言われることは結構あるのですが、これはプロ野球選手に向かって「キャッチボールできなくても野球上手くなりますよね」って言うのと同じくらい愚かなことだと一人でも多くの人に気づいてほしいです。”
まあ変えると言ってもこの程度です。基本的なメッセージに変更はありません。ただ元のツイートでは「プロ」という言葉のインパクトが強すぎたためか、「プロ以外には不要」という論調の批判が多く、私の意図が正確に伝わっていない事実を目の当たりにしました。私はあくまでも全ての英語学習者を対象にこれをつぶやいたのであり、プロになるかならないかは関係がないというスタンスでした。むしろ効率的な英語学習のためにも、初級者・中級者にこそ英文法は必要だというメッセージを伝えたかったのですが、私の力不足だったようです。今回のことでは自分の表現に対する認識の甘さを痛感させられました。
また今回のツイートの拡散は、「英文法」の解釈も人それぞれなのだということを知るきっかけにもなりました。
「英文法」と言うと、「小難しい文法用語や解釈を細かく覚えて説明できなければいけないこと」と受け取る人が一定数いるようです。つまりそういう人達は「文法」と言われると、嫌われ文法の代名詞とも言える「仮定法過去」や「過去完了形」を分析したり、「これは○○の●●用法」のように文章を細かく文法的に解説できなければいけないと考えてしまうようなのです。
しかしながら私が「英文法が大切」と言う際に指す文法はそういうことではありません。自著「初心者のための英語学習ガイド」やこのブログを読んでくださっている方にはお分かりいただけると思いますが、私が「英語を使う上で必要不可欠」と言う「英文法」とは、英語という言語の構造や使い方・ルールのことです。つまり「なぜその英文がそういう言葉の並びになるのか」や「どんな単語をどんな順番で並べると自分の言いたいことが伝えられるのか」を正しく理解できるかどうかということです。
これについてとても的確なコメントをいただいたので、こちらもシェアさせていただきます。
文法の基礎は押さえておかないと、伝えたいことが違う意味で伝わってしまうこともありますね。例えば、「私は混乱している」を英語にした時、「I am confusing」は間違いで正解は「I am confused」。前者だと「私は人を混乱させる人間です」になってしまいますから。
— メメント@ミャンマーいる (@yuminnco) November 6, 2018
故に文法は大事だと思います。
英語を母語として育った人であれば話は別ですが、外国語として英語を学ぶ私達には英語の文法知識はこの言語を使う上で必要不可欠なものです。文法の勉強の大切さとそれを疎かにすることのリスクはこれまでに何度も書いてきているので、それぞれ下記の記事をご参照ください。
簡単に英語ができるようになる方法?(中高生向け英語セミナーにて)
「文法や発音を気にしすぎるから英語が話せない」の本当の問題点01
また「文法よりも積極的に英語を使おうとする姿勢の方が大切」と言った、あたかも私が「英語学習には文法のみ重要」と主張しているような受け取り方をした人たちもおられましたが、それもまた私の意図とは異なります。英語を使うための基礎として文法はとても重要ですが、発音や語彙など英語の他の要素も等しく大切ですし、英語力よりも大切なこと(気持ちや姿勢)があることもまた事実です。それらのことについて書いた記事もここに載せておきます。
英語力よりも大切なこと(映画「マダム・イン・ニューヨーク」を観て01)
今回の件はTwitterというメディアの難しさを学び、言葉で何かを伝えることの難しさを再認識し、また多くの人の物の見方や考え方を知ることができたとても貴重な機会でした。連日Twitterの通知が鳴りっぱなしで少々疲れたのでまたあったらいいなと気軽には思えませんが、これからも多くの人と繋がる機会を大切にして行きたいです。
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【About Erika】
職業:英語同時通訳者(個人/フリーランス)
現住所:東京
留学歴:3年(アメリカ)
特技:柔道(初段)、ピアノ(弾き語り)
趣味:料理、お菓子作り、食器屋巡り
楽しみ:正月の箱根駅伝、2か月に1度の大相撲観戦(テレビ)、年に数回の柔道国際・国内大会テレビ観戦、年に数回のブロードウェイミュージカル日本公演、不定期の札幌旅行