こんにちは、英語同時通訳者でオンライン英語・通訳講師の山下えりかです。
今回は私自身の経験や現状含め、学習に取り組む姿勢について考えたいと思います。
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私がオンライン講座を始めて3年ほどが経ちました。これまでに短期・長期ともに多くの受講生のレッスンをしてきましたが、その中で常にあることを感じて来ました。それは、「自分の実力に見合った自信を持つことの難しさ」です。具体的な例として多いのは次の2つのパターンです。
1.実力が著しく足りないのに自信満々でプライドが高く十分に勉強しない人(そしてなぜか講師に対してやたら挑戦的な人が多い...正直疲れます。)
2.よく勉強していて十分な実力があるまたは成長しているのに自信を持てない人
こうなってしまう理由は単純で、前者は実力が足りないために正確な自己評価ができず自分を過大評価してしまい、後者は勉強をすればするほどに自分が知らないことや自分に足りないものの多さを知るため、実力がつけばつくほどに自信を持つことに億劫になってしまうからです。
私自身、中学1年生で英語を勉強し始めてから今までで一番自信があったのはいつかと問われれば、アメリカの大学から帰国してサイマルアカデミーに入る直前でした。今となってはあの頃が懐かしく、当時の自信満々だった自分を羨ましく思います。
それまで「英語でなら私、日本でテッペンとれるんじゃない?!」くらいの思い上がりがあった若き日の私は、サイマルアカデミーに入って最初に受けた実践英語コースで自分の英語力の足りなさを思い知り、通訳者養成コースに入ってからはありとあらゆるものが足りないという現実に直面し、それまでの「私英語得意~すごいでしょ~♪」な(若気の至りとしか呼び様のない)勘違いや思い込みやちっぽけなプライドなど跡形もなく吹き飛ばされました。
サイマルアカデミーではクラスのレベルが上がれば上がるほどに自信がなくなり、「どんなに勉強しても足りない、少しでも気を抜いたら力が落ちる」という強迫観念の中ひたすら勉強をし続けました。
その後どうなったかと言うと、「小松先生にB判定をもらってサイマルアカデミーを卒業したこと」で客観的な自信の根拠を得ることができ、「必要な勉強を続けている限りそのレベルの実力はあると自信を持って良い」と自分を納得させることができました。
とは言え通訳の仕事では今でも毎回とても緊張しますし、仕事の前夜には「明日クライアントの話す英語が一言もわからなかったらどうしよう」などという他人が聞いたら意味不明と思われるような内容の不安を感じることもあります。(ベテランのアナウンサーでも原稿が読めない夢を見るという話を聞いたことがあるので、これはもう仕方のないことなのだと諦めています。)だからこそ日々の勉強に加え、事前にできる限りの準備をして仕事に臨むという姿勢を崩すことはなく、それが品質の維持と向上へと繋がっているのです。
その一方でプロの通訳者として仕事を受けるからには、必要な自信を持たずに現場に立つことはその仕事に関わる全ての人に対して失礼にあたります。このためおごることのないよう細心の注意を払いながらも上手に自信を持つこともまた、プロとして必要な能力です。通訳歴12年目となりましたが、未だにその難しさを痛感する日々です。
話を学習に戻しましょう。これまで私が見てきた受講生はそのほとんどが先述の2つのパターンのどちらかでした。そしてこのことについて考える度に私の頭に浮かぶのが、タイトルにも書いた「実るほど頭を垂れる稲穂かな」ということわざです。
多くを学び実力を身に付ける人は成長する毎に謙虚になって行きます。時には謙虚すぎるほどです。その一方で根拠のない自信に固執して必要な勉強をしない人は、成長もしませんし誤った自尊心ばかりが増幅します。この場合いくら必要だと思ってアドバイスをしても聞く耳を持たず、実践もせず、アドバイスをする側も虚しくなってしまいます。またこの誤った自尊心はプロの現場ではリスク以外の何物でもなく、早くそのことに気づいて欲しいと願うばかりです。
ここであえて書くまでもなく、学習者の姿勢として望ましいのは2のパターンです。常に自分には足りないものがあると自覚し、その克服のために必要な勉強に真摯に取り組むことこそ、成長のために必用不可欠なものです。しかしながらこの場合先述の通り、自信を持つことが難しいという弊害があります。
自分で正確に実力を見極めて相応の自信を持つことのできる人ならば問題ありませんが、これはとても難しいものです。レベルが上がれば上がるほどに難しくなります。そんな時に役に立つのが、経験者の評価です。私の場合それはサイマルアカデミーでお世話になった先生方、特に卒業の判定をしてくださった小松先生の評価でした。
自分で自分の実力に自信が持てない時、既にそれを経験してきた人、または多くのサンプルを見てきた人の評価を根拠として自信を持つというのは有効な手段です。私の講座やレベルチェック&学習アドバイスにもこれを求めて受講される方が多いと認識しています。
私はこの記事を、通訳者として講師としてこれからも現状に満足することなく研鑽を積んで行くため、自分への戒めとして書きました。しかしながら、現在講座をご受講いただいている受講生の皆様、このブログを日々の学習にお役立ていただいている読者様、そして今後英語・通訳講座やレベルチェック&学習アドバイスの受講を検討される未来の受講生の皆様にも参考にしていただけましたら幸いです。
良い学びのため、まずは気持ちから整えて参りましょう。