こんにちは、英語同時通訳者でオンライン英語・通訳講師の山下えりかです。
先日、ドラマ「わたし、定時で帰ります。」が最終回を迎えました。「働き方」や「働くことの意味」を様々な人の視点から捉えた、とても興味深いドラマでした。
このドラマで特に気になったのが、メインキャラクターの2人。定時で帰ることを信条としている主人公の東山さん(吉高由里子さん)と、仕事ができて仕事が大好きなワーカホリックの種田さんです。周囲の心配を気に留めずに働き続ける種田さん(向井理さん)と、定時で帰ることを信条としていたのに最終回に過労で倒れる主人公を見ていて、その姿が少し前の自分と重なりドキッとしました。今回はその時のお話です。
数年前、私は初めて大きな翻訳の仕事を受注しました。エージェントを通したものではなくクライアントから直接依頼された仕事でした。それまで小口の翻訳の仕事をしたことは何度もありましたが、一度に数万語というボリュームは初めてのことで、興奮していました。気合たっぷりに、受注したその日から毎日パソコンに向かいました。
翻訳が半分ほど完了したある日、異変が起きました。いつものようにパソコンに向かっていたところ、突然全身が震えるほどの寒気がしたのです。どうしたことかとすぐにベッドに横になりましたが、寒気がおさまりません。しばらくして震えが止まると、今度は頭がぼーっとするほどの熱さに襲われました。体温を計ってみると39℃の高熱。(◎_◎;)
初めての大口の翻訳仕事。納期にはかなり余裕があったものの、できるだけ早く終わらせてじっくりチェックをしたいという気持ちから、気づけば毎日かなりの時間を仕事に費やしていました。また絶対に失敗したくないとう気負いもあり、連日極度の緊張状態での長時間労働となっていたのです。
発熱当初は、「あちゃー…仕事しすぎたかぁ。でもまあ少し休めば大丈夫でしょ」程度にしか考えていませんでした。私の場合、通訳の仕事の時はいつも仕事中から終了後にかけて(真冬に外で上着を脱いでしまうくらい)体温がかなり上がるため、この時も「ちょっとしたオーバーヒート」だと思っていたのです。しかしながらこの時は解熱剤が一切効かずに翌日まで高熱が続き、更にそのせいで食欲までなくなってしまい、さすがに焦りました。
色々と調べたところ、発熱と言っても解熱剤が効くものと効かないものがあるとのこと。特に過労や心因性の熱は解熱剤が効かないことが多いのだそうです。
病院に行くか、このまま自宅療養を続けるか、どうしようか悩んでいたら、心配のあまりに自分まで汗をかいていた主人が一言。
「札幌に行こう」
札幌は私の一番のお気に入りの旅先で、多少元気が無い時でも札幌に行けばMAX元気になるという私にとってのパワースポットなのです。
「精神的なものが原因ならここにいても仕方ない。私も休みを取るから、仕事は全部置いて、札幌に行こう。病院ならあっちでも行ける。」
そう言って翌日、主人は有無を言わさず私をパワースポットに連れ出してくれました。
自分でも驚いたことに札幌に着くと半日で熱が平熱まで下がり、みるみるうちに回復しました。また札幌に滞在していた間主人はとにかく私の心を落ち着かせることを優先し、仕事にも英語にも一切触れさせず、テレビのニュースまで遮断する徹底ぶりでした。ニュースオタクの主人がよくあそこまでできたものだと、今思い出しても感動します。
札幌での数日間の静養後、帰京してまず主人と話し合って決めたのは、一日の仕事量、一日の仕事時間、週に最低二日は休みを作るというルールでした。これに基づき納期までのスケジュールを組み、そこからは自分のキャパとペースを守って仕事を進めるようになりました。
この出来事は、私の未熟さと自分のキャパへの過信故に起きてしまったことでした。ペースを掴むことができたという点では良い経験だったとも思いますが、主人にとんでもなく心配をかけてしまったことは深く反省しています。また納期に余裕があったお陰で多少の遅れは問題にならなかったものの、状況が違えばクライアントに迷惑をかけていたかもしれません。体の不調も、体力のある若いうちだったから回復も速かったのだとも思います。大事に至らなかったことは、ただただ幸運だったとしか言いようがありません。
こんな危なっかしい失敗をしたからこそ、ここから学んだことは忘れてはいけないと思っていますし、今後の仕事に活かしていかなければと思っています。またこの経験から主人は、私のマネージメント業務を担ってくれるようになりました。心配性なマネージャーのスケジュール管理のもと、今では安心して日々様々な仕事をすることができています。
こんな事故は無いに越したことはありませんが、私が成長し自分に合った働き方を見つけるためには必要なことだったのかもしれません。
「わたし、定時で帰ります。」は、忙しくなるとつい後回しにしてしまいがちな自分の体のこと、それを心配してくれる人の気持ち、頑張りすぎが招きかねない最悪の事態のこと等々、大切なことを改めて認識させてくれたドラマでした。
皆様もどうぞ、働きすぎにはご注意を。(^_-)-☆