こんにちは、英語同時通訳者でオンライン英語・通訳講師の山下えりかです。
シリーズ「英文法で楽しむ洋楽」3回目の今回は、Melba Moore & Phil PerryのOptimisticです。少しでもコロナショックの慰めになる曲をと思い、初回はWhat’s Going On (今起きていること)を、2回目にはPatience(耐えよう)を載せました。これに続いて今回は収束と復興を願う曲として、Optimistic(気楽に行こう)を選びました。
”optimistic”という単語は、「楽観的・楽天的」という意味です。ただし日本語の「楽観」という言葉にはある種の無責任なニュアンスが含まれている一方で、”optimistic”は「大丈夫と信じられる理由があって楽観的」というイメージです。実際この曲でもそのような意味で使用されているため、訳語には辞書的な置き換えの「楽観」という言葉ではなく、「(頑張ってるんだから大丈夫)気楽に行こう」という言葉をあてました。
まだまだ大変な状況が続きますが、下を向かずに空を見上げて、できるだけ明るい気持ちで過ごして参りましょう。
今回も文法的な分析から見えてくる洋楽の奥深い世界を楽しんでいただけたら嬉しいです。
Optimistic / Melba Moore & Phil Perry
You can be optimistic
気楽に行っていい
You can be optimistic
気楽に行っていい
“can”には「〇〇できる」以外に「〇〇していい」という意味があります
ここでは「気楽にやって行けば良いよ」というニュアンスで使われているので
後者の意味です
また”be”は「〇〇(の状態に)なる・ある」なので
直訳すると「気楽になっていい」となりますが
日本語としては少し違和感があるのでここでは「(生きて)行って」という表現しました
When in the midst of sorrow
悲しみの真っ只中にいる時
You can't see up when looking down
下を向いていたら上は向けない
この2行にはどちらも省略されている単語があって、実際には
When (you are) in the midst of sorrow
You can’t see up when (you are) looking down
となります
「この文法おかしくない?」と感じたら、
どこかに省略されている言葉が無いかを考えてみると良いです
またここに出てくる”when”は「いつ」という疑問詞ではなく、
「〇〇の時」という関係詞です
A brighter day tomorrow will bring
明日は明るい日を運んでくれる
ここは倒置法になっていて、通常は
“Tomorrow will bring a brighter day”
前後を入れ替えている理由は
直前のラインの終わりの”down”と”bring”で韻を踏ませるためでしょう
You hear the voice of reason telling you this can never be done
これは絶対にできないと諦めの声が聞こえる
“voice of reason”は直訳すると「理由の声」
「自分で考えたできない理由が自分に語り掛けてくる」というイメージです
“this can never be done”は「be動詞+過去分詞」の受動態
直訳すると「これは絶対にされることができない」
ここから「絶対にできない」という意味で使われます
No matter how hard reality seems
どんなに現実が苛酷に見えても
Just hold on to your dreams, yeah
とにかく夢を手放さないで
“hold on to”で「しがみつく」
直訳は「とにかく自分の夢にしがみついて」
Don't give up and don't give in,
諦めないで 譲らないで
Although it seems you never win
絶対に勝てないように見えても
You will always pass the test
あなたはいつでも試練を乗り越えられる
as long as you keep your head to the sky
空を見上げてさえいれば
“as long as”で「〇〇さえすれば、〇〇である限り」
You can win as long as you keep your head to the sky
空を見上げてさえいればあなたは勝てる
You can win as long as you keep your head to the sky
空を見上げてさえいればあなたは勝てる
Be optimistic
気楽に行こう
If things around you crumble
あなたの周りが崩れてしまったとしても
know you don't have to stumble and fall
あなたがつまずいたり転んだりする必要はないと覚えていて
“have to 動詞原形”で「〇〇しなければならない」
肯定で使う時は助動詞”must”とほぼ同義です
ただし否定形になると
”don’t have to”は「〇〇しなくても良い、〇〇する必要はない」
“must not”は「〇〇してはいけない」
と異なる意味になります
Keep pushing on and don't you look back
前に進み続けて振り返らないで
I know the storms and strife
(人生には)嵐も争いもある
“know”は「知っている」なので
直訳は「私は嵐も争いも知っている」
I love your outlook of life
あなたの人生観はとても素敵だから
“love”は「愛してる、大好き」という動詞ですが、
“I love (like) your bag.(あなたのバッグ素敵ね)”のように
「あなたの〇〇素敵ね」という意味でも使われます
Just think ahead and you'll be inspired
ただ先のことを考えて そうすればやる気がみなぎる
To reach higher and higher
更に高みを目指すために
You'll always do your best
あなたはいつでもベストを尽くす
if you learn to never say never
「絶対にできない」と絶対に言わないようになれば
“never”は「絶対に...ない」という意味の単語で
この曲の歌詞では”optimistic”と同じくらい大切に何度も使われている単語です
“never”が2度も続けて出てくるのは二重否定?と思うかもしれません
でもこれはきちんと文法的に成立していて二重否定ではありません
分かりやすいようにクオーテーションマークを付けると
If you learn to never say “never”
つまり「〇〇と絶対に言わないことを学べば」
「『絶対にできない』と絶対に言わないことを学べば」
となります
“if”は「もし〇〇なら」
“learn”は「学ぶ」
“to never say”は不定詞(名詞的用法)で
動詞の原形にtoを付けることで「〇〇すること」と
動詞を名詞と同じ状態にする用法です
“to say”なら「言うこと」
否定なら”not to say”「言わないこと」(notはtoの前に入る)
ここでは"never say(絶対に言わない)"がセットで動詞として使われていて
”to never say”「絶対に言わないこと」となっています
ただし”not to never say”にすると二重否定で文法も意味も破綻するので注意です
You maybe down, but you're not out
落ち込むことはあるかもしれないけれどそれは終わりじゃない
Don't give up and don't give in,
諦めないで 譲らないで
although it seems you never win
絶対に勝てないように見えても
You will always pass the test
あなたはいつでも試練を乗り越えられる
as long as you keep your head to the sky
空を見上げてさえいれば
You can win as long as you keep your head to the sky
空を見上げてさえいればあなたは勝てる
You can win as long as you keep your head to the sky
空を見上げてさえいればあなたは勝てる
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