こんにちは、英語同時通訳者でオンライン英語・通訳講師の山下えりかです。
私がオンラインで通訳講座を始めてから3年になります。振り返ってみると当初私が予想していたよりもずっと多くの方にご受講いただいており、感謝の気持ちでいっぱいです。
以前「インターネットで通訳訓練のレッスン(オンライン通訳講座)始めました」の記事にも書いた通り、私の通訳講座はこのブログをご覧いただいていた方々からのご要望にお応えする形で始まりました。始めたばかりの頃は毎回手探りでしたが、回を重ねるごとに新たな気づきを得てその都度レッスン内容の修正と改善をしてきました。そして試行錯誤を幾度となく繰り返しながら、今の講座と指導方針が完成しました。
私の通訳講座はこれまでご受講いただいたすべての受講生のおかげで出来上がったものです。開講から丸3年というこの機会に、改めて心より感謝申し上げます。
今回と次回はそうして出来上がった私の通訳講座の内容について前編・後編に分けてお話しします。前編の今回は使用教材についてです。
✔ SDGsを使う理由
現在当講座では、SDGs(Sustainable Development Goals / 持続可能な開発目標)をテーマにした教材を使用しています。
SDGsは2030年までに世界が達成すべき17の目標を掲げています。私がこれを通訳教材に選んだ理由は、この17目標が「教養・知識セット」として非常に優秀だからです。
✔ 通訳者にとっての教養と知識
通訳者にとって知識は日本語力・英語力や通訳技術と並んで重要なものです。「言葉の力は、半分は知識であり考える力」というのが私の通訳の師である小松達也先生の教えです。また「通訳者は何でも知っていなければならない」「通訳者に不必要な知識など存在しない」と言われるほど、良い通訳をするためには膨大な量の知識が必要です。
しかし「知識が必要」と言われてもどこから何から手を付けたら良いのかわからないというのが一般的な感想でしょう。通訳者に必要な国際的な教養を身につけるにあたり、「どんな分野に触れれば良いのか」「どんなことを知れば良いのか」のひとつの答えがSDGsだと私は考えています。
✔ 知識と読解力を身につけるための教材と指導
私はサイマルアカデミーでの通訳訓練時代、知識不足と読解力不足に悩まされました。そして多くの受講生にも同じ傾向が見られます。この経験から、単に英語力を高めたり通訳技術を身につけるためのレッスンでは不十分だと感じていました。
今私がレッスンで使用しているSDGsの教材は、世界で最も注目されている各分野に触れ、効率的かつ効果的に知識を吸収することに重点を置いています。
また通訳をするために不可欠な読解力を鍛えるため、前後の情報の繋がりへの意識を高めるために「この it は何を指すのか」「この日本の文章の主語は何か、目的語は何か」ということを確認しながら、丁寧な指導を心がけています。
これらはどちらも私が通訳訓練を受けていた頃に抱いていた「効率的に知識を増やしたい」「読解のコツやヒントを知りたい」という悩みへの解決策です。当時の私と同じ悩みを抱える人たちに役立てて欲しいと願っています。
✔ SDGs教材の特徴
SDGsの通訳教材は、17目標に「SDGsとは」を加えた18テーマそれぞれに対し英語教材と日本語教材を2本ずつ、合計36本を用意しています。内容は異なりますが同じテーマの教材に英語と日本語両方の言語からアプローチすることで、表現、語彙、知識の定着をはかります。
使用する順番は英語(英→日)が先で、その後に日本語教材(日→英)を使用します。その理由は主に2つあります。
ひとつは、訳出言語が日本語であれば訳の内容や表現が正しいかどうかの判断が自分でしやすいため、自信を持って訳出できるということ。ふたつめは、先に英語でそのテーマに触れておくことで、次に同じテーマの日本語教材を英語に訳す際に自信を持って使える表現をインプットしておくためです。
英語教材の復習は次に使用する同じテーマの日本語教材の予習にもなっています。またSDGsの17目標はそれぞれに関連し合っているため、日本語教材の復習も次のテーマの英語教材の予習につながります。
✔ 復習と予習の循環イメージ
上で触れた「復習が予習になる」の具体例を見てみましょう。
Lesson 1: What are the SDGs? / 英→日
SDGsの概略と英語での表現を学ぶ。
Lesson 2: SDGsとは / 日→英
前教材で学んだSDGsの概略の知識をもとに理解を深め、前教材の英語表現を英訳に応用する。
Lesson 3: No Poverty / 英→日
SDGsの概略で触れた貧困に関する知識や語彙を理解と和訳に活かす。
Lesson 4: 貧困をなくそう / 日→英
前教材で学んだ貧困に関する知識をもとに理解を深め、前教材の英語表現を英訳に応用する。
Lesson 5: Zero Hunger / 英→日
飢餓と関連の深い貧困に関する知識や語彙を理解と和訳に活かす。
先述の通りSDGsの17目標はそれぞれが関連し合っているため、出てくる語彙や表現が似ていることもあります。そのため次々と新しい教材を使いながらも反復練習できる部分もあり、学んだことを実際に使いながら効率的に定着させることができます。
※SDGsについては毎月30日に無料の通訳練習用動画を公開しています。上記リストのタイトルをクリックすると教材動画に移動できますのでこちらもご活用ください。
✔ おわりに
SDGsは学習教材としてだけでなく、もちろんその策定の経緯やそれぞれの目標がとても興味深く素晴らしいものです。講座の受講の如何に関わらず、この記事がSDGsを知ったり興味を持つきっかけになれたら幸いです。
次回はレッスンの演習内容や課題、復習の内容や推奨しているやり方についてお話しします。
次の記事:オンライン通訳講座個人レッスンの内容紹介(演習内容、課題、復習の仕方、その目的等々)
前の記事:【通訳練習教材】SDGs 3 Healtha and Well-being / すべての人に健康と福祉を(英語&日本語動画)
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