こんにちは、英語同時通訳者でオンライン英語・通訳講師の山下えりかです。
私は以前、マイナビ進学の「進路のミカタ」という部門の「シゴトを知ろう」という企画で(書面での)インタビューを受け、2019年11月に同ウェブサイトに記事を掲載していただきました。「高校生にも分かるように易しい言葉で説明してください」とのリクエストを受け、できるだけ平坦な言葉を使って自分の仕事についてお話しをしました。
その記事はトップページと自己紹介ページに画像付きでリンクを貼ってあったのですが、どうやら「進路のミカタ」のサービスが先月で終了してしまったらしく、私の記事も消えてしまったようです。しかしながらせっかく頑張って書いたものだったので、「進路のミカタ」に掲載されていた記事と同様に、2回に分けてこのブログに残しておきたいと思います。
以下、記事の内容です。マイナビ掲載時には編集で削られてしまった部分もありましたが、ここでは私が書いたままを載せておきます。
Q1. お仕事の概要と一日のスケジュールを教えてください。
私の仕事は、日本語と英語の通訳です。仕事の形態はフリーランスと言って、会社には所属せず、エージェントと呼ばれる「通訳と通訳を必要としているお客様とを仲介する会社」に登録をして仕事の依頼を受けたり、または個人で仕事を受けたりする個人営業です。企業や団体から通訳の依頼を受け、指定された日に指定された場所に出向いて通訳をします。
フリーランスの通訳の場合、毎日決まった時間に決まった場所で仕事をするのではなく、日によって仕事時間も仕事場所も変わります。ここではよくあるスケジュールのパターンを紹介します。
《よくあるパターン/社内会議、視察、研修等》
7:00 自宅を出発
9:00 クライアント(お客様)と待ち合わせ
9:30 仕事の事前打ち合わせ
10:00 通訳(会議、プレゼン、スピーチ、設備や商品の説明など)
12:00 昼食
13:00 通訳
15:00 小休憩
15:20 通訳
17:00 業務終了、帰宅
この他、日帰りで韓国出張をした時は「午前2時に自宅出発、翌日午前2時に帰宅」などというハードスケジュールだったり、通訳が必要な時間が短い仕事では「現地に到着してから30分間だけ通訳をして解散、帰宅」などというイレギュラーなスケジュールも多々あります。
【参考】
Q2. お仕事をされる中で、やりがいや楽しさを感じるのはどんなときですか?
通訳の仕事をしているとたまに、発言者の考えていることが手に取るように分かり、話の先が読めて、まるでその人と自分の頭の中が繋がっているような感覚になることがあります。そんな時は聞く人が分かりやすい、正確で流れのある良い通訳をすることができます。これができるのは、毎日のトレーニングと勉強を欠かさず、事前準備をしっかりした結果です。努力が報われてお客様に最高のパフォーマンスを届けられるこの時がとても楽しく、何よりもやりがいを感じます。
【参考】だから私は通訳が好き
Q3. お仕事の中で大変さや苦労を感じるのはどんなときですか?
私は通訳のスキルを維持するために、毎日欠かさずシャドーイングというトレーニング(英語または日本語を聞きながら一拍遅れて同じ内容を同じ言語で声に出して繰り返す練習)をしています。そして毎日必ずニュースや新聞をチェックしたり、分からない単語はその都度調べたりと、仕事のために必要な勉強もしています。これを毎日続けていると、続けることの大変さを感じることがあります。また仕事の内容によっては事前に猛勉強しなければならないこともあるので、これも苦しくなることがあります。しかしながらQ2で書いた通り、これは良い仕事をするために必要なことなので大変でも頑張れます。
【参考】
同時通訳者Erikaが実演「シャドーイングのやり方(お手本)」
Q4. 今のお仕事を目指したきっかけを教えてください。
アメリカの大学で学んでいた時に、漠然と将来どんな仕事をしたいか考えるようになりました。そこで次のような自己分析をしました。
1.自分の好きなこと、したいことは何?
- 英語がとにかく大好き
- 英語を最大限に活かせる仕事がしたい
- 仕事は日本でしたい
2.「日本で英語と離れずにいられる仕事」は何だろう?
- 通訳か翻訳!
3.二つの仕事の違いとは?
- 通訳は「聞く」と「話す」がメイン
- 翻訳は「読む」と「書く」がメイン
4.どっちが好き?
- 「聞く」と「話す」が好き!
5.通訳を目指すと決める
以上が通訳を目指したきっかけです。
【参考】
Q5. 今のお仕事に就くために、どのようなことを学ばれましたか?(大学や専門学校で学んだこと、またそれ以外の場所や独学で実践していたことなど)
私は高校2年でアメリカのテキサス州に1年間の交換留学をした後、日本の高校を卒業し、アメリカのカンザス州の大学に進学しました。どちらも現地の学校で現地の学生と同じ授業を英語で受け、生きた英語を学ぶとても良い機会となりました。日本に帰国してからは、東京の通訳者養成機関サイマルアカデミーで通訳技術を学びました。毎日のシャドーイングはこの頃から続けています。
また通訳の勉強を進めて行く中で、専攻だったマスメディアに限らず、経済学や文学など、大学で学んだ様々な知識に助けられることが沢山あり、「通訳に必要ない知識はない」ということを教えられました。
【参考】
医療英語や技術通訳など○○英語や○○通訳の勉強法 - 「言葉の力は、半分は知識であり考える力」
【私が通訳になるまで40】積み重ねの大切さと恩師の教え(あとがき)
Q6. 高校生のとき抱いていた夢が、現在のお仕事につながっていると感じることはありますか?
あります。
私は中学生の頃から英語が得意で、中学3年生の頃の担任の先生に勧められたこともあり、高校で留学することを決めていました。そのため留学前から「将来は絶対に英語を使って仕事をする」と決めていました。
そして高校で留学し、受け入れ先の学校で受けたジャーナリズムの授業が面白かったため、帰国して日本の高校に戻って来た当時の私の夢は「国際的なジャーナリストになること」でした。これがきっかけとなり、大学はマスメディア学部に入ると決めました。
その後様々な経験をして将来目指すものは変わりましたが、「英語が好き」「英語で仕事がしたい」というこの時の夢や気持ちは間違いなく今に繋がっています。
【参考】
Q7. このお仕事はどんな人が向いていると思いますか?
自分に厳しく、常に向上心を持って学び続けられる人です。
私のように「英語が好きだから」という理由で通訳を志す人は多いと思います。もちろん「好きなことを頑張って仕事にしたい」という目標を持つことはとても良いことです。しかしながら通訳は言葉ができるだけではできません。
通訳には、外国語の力以上に母語(日本語)の力が不可欠です。またその他にも、様々な分野の専門家の話を理解できるだけの知識、読解力、思考力、表現力、発想力、基礎的な通訳技術(話を正確に記憶する力、内容を正確に再現する力、瞬時に要点を見極める力、通訳用のメモ取りの技術)、訳す力等、多くのスキルが必要です。
これらの力を妥協せずに日々磨き続けられる人にこそ、向いている仕事だと思います。
【参考】
Q8. 通訳を目指している高校生へ向けて、ひと言メッセージをお願いします。(今のうちに実践や経験、勉強しておくといいことがあれば、教えていただけますと幸いです)
英語を含め、今学校でやっている勉強に全力で取り組んでください。
まず英語についてですが、「日本人が英語ができないのは日本の英語教育がダメだから」という言葉を耳にしたことがある人は多いと思います。しかしそれは間違いです。
私は中学1年生から英語の勉強を始めました。そして高校受験に向けて、中学2年の2学期から英語の教科書の暗唱を始め、中学卒業時には中学校3年間分の教科書をすべて暗唱していました。これが私の英語の基礎です。このおかげで、高校留学では現地での会話に困ることはほとんどありませんでした。
高校留学後に日本の学校で受けた大学受験用の英語教育も同じです。中学の基礎の上に高校で習う英語を積み上げることで、「日常会話レベル」を脱し、アメリカの大学でも十分通用する英語力を身につけることができました。高校での英語学習は、通訳に必要な高く正確な英語力を育てるためにも、とても大切な学習機会と言えます。
英語以外の教科については、国語は母語の力を高めるため、その他の教科も知識として、いつか必ず役に立ちます。好き嫌いせずに、何でも学び吸収してください。
【参考】
次の記事:【通訳練習教材】SDGs 13 Climate Action / 気候変動に具体的な対策を(英語&日本語動画)
前の記事:【音楽と英文法 #006】We Are the World / U.S.A. For Africa
お薦め:私が通訳になるまで1~40話
【About Erika】
職業:英語同時通訳者(個人/フリーランス)
現住所:札幌市
留学歴:3年(アメリカ)
特技:柔道(初段)、ピアノ(弾き語り)
趣味:料理、お菓子作り、食器屋巡り