こんにちは、札幌在住の英語同時通訳者でオンライン英語・通訳講師の山下えりかです。ご訪問いただきありがとうございます。
私事ではありますが、この10月で通訳者としてデビューしてから15年になりました。過去の記録を見たところ、2007年の10月4日が初仕事。今でも鮮明に思い出せる、それはそれは楽しい初仕事でした。初仕事以外にも本当にたくさんの仕事とご縁に恵まれた幸せな15年間でした。
15周年の節目ということで、今回は通訳者としてのこの15年間を振り返りつつ、私が大切にしている教訓を紹介します。
✔ 最高の初仕事
まずは何と言っても初仕事について。私の通訳デビューは、まだ静岡の実家から東京のサイマルアカデミーに通っていた頃でした。通訳者養成コースの準備科(現在の通訳I)を修了し、次の入門科(現在の通訳II)が始まるまでの休み期間中に受けた仕事でした。(仕事の詳細は過去の記事に書いたのであえてここには書きません。ドキドキワクワクの初仕事の話を読んでみたいという方は、ぜひ下記リンクをご参照ください。)
この初仕事は、私に通訳の楽しさを教えてくれた仕事であり、その後の仕事にも、サイマルアカデミーでの訓練にも大きな刺激となりモチベーションとなってくれました。
またこの時のクライアントはとても温かく素晴らしい方々で、私に仕事への自信と誇りを与えてくれた恩人でもあります。その後も何度か一緒に仕事をさせていただきましたが、彼らほど素敵なクライアントにはその後数えるほどしか出会っていません。一番最初の仕事を最高の条件の下でできたことは、今でも天からの授かりものだったと思っています。
【参考】
✔ サイマルアカデミー
私の通訳人生を語る上で今でも大きなウェイトをしめているのが、私の通訳の基礎を作ってくれたサイマルアカデミーでの通訳訓練です。
サイマルアカデミーの準備科(通訳I)と入門科(通訳II)で徹底的に鍛えられた、リテンション&リプロダクション(短期記憶保持&内容の再現)、要約、新聞の精読、語彙の暗記等の基礎力は、今の私の通訳の礎です。特にこの時のリテンショントレーニングのお陰で、今でも長いポーションの通訳に対応できますし、それが私が逐次通訳を得意とする所以でもあります。
今でも通訳の仕事の時やレッスンで指導をする時、サイマルアカデミーで先生方に教わったことをよく思い出します。通訳技術だけでなく、通訳という仕事への姿勢を学んだ、大切な時間でした。
✔ 印象に残った仕事
どの仕事も印象的でしたが、中でも想い出に残っている仕事をいくつか挙げてみましょう。
1.初仕事
理由は最初に書いた通り。色々な意味で想い出No.1の仕事。
2.サッカーのレフェリーインストラクター講習会
サッカーのレフェリーを目指す人たちのための講習会の通訳をした仕事。ジャージでサッカーコートを走り回って声を張り上げて通訳して...年齢的にも体力的にも、もう二度とできませんしやりたくありません。ただ、この仕事の話はネタとしてはかなり重宝しています(笑)。
【参考】
3.スカイツリーの地下施設視察
結局一度も登らずに北海道に引越してしまった、スカイツリー。登ったことはありませんが、地下施設の視察に通訳者として同行しました。スカイツリーの地下はレアすぎて興奮しましたし、非常に興味深かったです。
4.アメリカの政治と財務がテーマの講義
都内の大学で、アメリカの教授を招いて行われたアメリカ政治と財務がテーマの講義の通訳。アメリカの政治と国内情勢についてはこの仕事の10年以上前から興味を以て勉強を続けてきました。こうして積み上げた知識がすべてきれいに役に立ち、初対面の教授ととても息の合った通訳ができ、確かな手ごたえを感じられた最高の仕事でした。基本自分の仕事に関しては常に反省が先の私が、自分で自分に満点をつけられた今のところ唯一の仕事です。
✔ 大切にしたい教訓
最後に、この15年間の学びをもとに自分への教訓をまとめました。
1.謙虚であれ
技術であれ、経験であれ、知識量であれ、奢った瞬間に自分は通訳者でいる資格を失うと思っています。どんなに年数を重ねても、初仕事の時のような緊張感と謙虚さを忘れずにいようと心がけています。
2.学びに貪欲であれ
「通訳に不要な知識はない」これはサイマルアカデミーで多くの先生方から異口同音に聞いた言葉です。これが真実であることは、この15年間の様々な仕事の場面で自ら経験し実感してきました。学んだ時には「こんなこと知っていても役に立たないだろうなぁ」と思った知識に救われた経験は1度や2度ではありません。これからも好き嫌いせずに何にでも興味を持ち、学び続けます。
3.チャンスに大胆であれ
私を知る人たちはあまり信じてはくれませんが、私は元々とても臆病な性格です。そのため新しいチャンスが巡ってきても、怖くて手を伸ばすのを躊躇してしまうことがしばしば。しかしながらこれまで、周囲に背中を押されて手を伸ばしたチャンスはどれも素晴らしい道を私に切り拓いてくれました。今後は誰かの手を借りなくても自ら大胆にチャンスを掴みに行けるよう、精進します。
4.出会いを楽しめ
通訳の仕事は、人と、知識と、言葉との出会いの連続です。そのひとつひとつを大切にして、ひとつひとつを全力で楽しむのが、この仕事を楽しむ秘訣です。
5.常に笑顔であれ
通訳の仕事は常に緊張と隣り合わせ。そのため仕事中いつも笑っているわけにはいきませんが、心の中ではいつでも笑顔でいるよう心がけています。どんなに大変な時でもほんの少し心の余裕を残しておくことは安定したパフォーマンスに不可欠だからです。またそれは表情の柔らかさや自ら醸し出す雰囲気に映し出され、周囲の人たちとのコミュニケーションを円滑にします。コミュニケーションの橋渡し役である通訳者として、これもまた大切なことだと感じています。
6.感謝の気持ちを忘れないこと
最後になりましたが、この15年間私が通訳者を続けてこられたのは、私が通訳を通して関わったすべての人のおかげです。これからも感謝の気持ちを忘れずに、通訳者として更に鍛錬を積み、人の言葉と想いを繋いで行きたいと思っています。
✔ おわりに
クライアントの皆様とのご縁とご協力、そしてサイマルアカデミーで鍛えられた基礎力に支えられ、初仕事から15年間、通訳者の看板を下ろすことなくこの大好きな仕事を続けて来ることができました。16年目以降も慢心せず、鍛錬を怠らず、良い仕事ができるよう努力を続けて行きます。
皆様、今後とも通訳者山下えりかをよろしくお願いいたします。
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