こんにちは、札幌在住の英語同時通訳者でオンライン英語・通訳講師の山下えりかです。 ご訪問ありがとうございます。
ここ数年、11月になると突然話題になるブラック・フライデー。メディアでは「もともとはアメリカの商習慣で...」とかなり簡易的な説明はされるものの、そもそもブラック・フライデーって何なのかわからないという人も多いでしょう。とは言え何となく定着してしまった感があるので今更人にきけないという人のため、今回はアメリカのThanksgiving(サンクスギビング)とBlack Friday(ブラック・フライデー)についてお話しします。
✔ Thanksgiving(感謝祭)の起源
アメリカでは11月の第4木曜日がThanksgiving Dayすなわち感謝祭となっています。この日は祝日で、学校も仕事もお休み。その流れで大抵翌日の金曜日もお休みとなり(州によっては州法でこの金曜日を祝日と定めているところもあり)、多くの人にとっては4連休の週末となります。
Thanksgivingの起源は、現在のアメリカ合衆国を建国した移民の人々がアメリカ大陸に渡って来たばかりの時代。最初の冬に寒さと飢えで多くの死者が出て、困っていた彼らを原住民(ネイティブ・アメリカン/インディアン)の人々が助けてくれました。狩猟の仕方を教え、畑を耕し、彼らがそこで生きて行くのに必要な知恵を貸してくれました。そして秋の収穫の時期を迎え、移民の人々は原住民の人々を招いて感謝祭を開きました。これがアメリカのThanksgivingの始まりです。
✔ Thanksgivingの過ごし方
私は田舎の家庭のThanksgivingしか知りませんが、アメリカのThanksgivingは基本的に家族が集まってご馳走を食べてワイワイする日。日本のお盆やお正月のような感覚です。
ターキーやスタッフィング、クランベリーソースやパンプキンパイ等、伝統的なThanksgiving料理がテーブルに所せましと並び、みんなで食事をする前にはその家族の年長者がThanksgivingの起源について語って聞かせます。
「色々あったけど、私達の祖先と原住民がこんなに仲良しだった頃があったんだよ」と穏やかな顔で語られる度に、何度も突っ込みたい衝動にかられました。
せっかくなのでここで言わせてください。
「でもその大恩を仇で返して土地と財産と命を奪って原住民の生活をめちゃくちゃにしたのってその‟祖先”だよね?全然美談じゃないよね?」
なんて言ったら場の空気が凍り付くのは目に見えるのでもちろん何も言ったことはありません。
ちなみに知人のアメリカ人女性(白人種とハワイ原住民のハーフ)は、以前Thanksgivingについてこう話していました。「Thanksgivingってさ、‟助けてくれてありがとう、でも殺してごめんね”の日だと思ってる。」アメリカ人にもこういう人はいるようです。
さてこの11月第4木曜日のThanksgivingには家族団らん以外にももうひとつ、日本のお正月と似ている点があります。それはこの日は街のお店の多くがお休みになること。まあ今はもう時代が時代ですし日本でもお正月にコンビニやスーパーが開いているのは普通ですが、基本的にはお休みのお店が多い日です。この祝日自体家族そろって家の中で過ごすというものですから、当然と言えば当然です。
そしてこの翌日の金曜日こそ、‟Black Friday”と呼ばれる年に一度の特別な金曜日なのです。
✔ Black Friday(ブラック・フライデー)の意味
アメリカでは10月末のハロウィン→11月のThanksgiving→12月のクリスマスという風に、世間のイベントムードが移って行きます。Thanksgivingの翌日の金曜日とはそこから約一ヶ月間続くクリスマス商戦の初日であり、前日多くの店が休業することで再スタートムードが高まる日でもあり、また家族が揃っている連休中と言うことで多くの買い物客が街に出る日でもあります。
その結果お店の売り上げが爆発的に伸びて「黒字になる金曜日」と言うことで、‟Black Friday”と呼ばれています。
つまりアメリカのBlack Fridayは前日のThanksgivingから始まる連休ありきのセールであり、アメリカの歴史と文化に基づく習慣であり、これをブラック・フライデーの部分だけ日本でやると言うことは、大晦日も元旦も関係ない時期に「初売りセール♪」をやるくらい、本来であれば不自然で違和感だらけなことなのです。
日本のブラック・フライデーを見ていると、感謝祭が無いために時期もかなり曖昧で「とにかく派手に宣伝すれば良い感」が否めず、正直微妙な気持ちになります。でもまあ、ハロウィンと年末年始の間で何もない11月にお祭り感覚のセールがあるというのは悪くはないかな?と、最近では思うようになりました。私も家計を預かるいち主婦ですので(笑)。
✔ おまけ① サイバー・マンデー
アメリカの商習慣には、ブラック・フライデーに付随して、サイバー・マンデーとグリーン・マンデーというものもあります。せっかくなのでここで少し解説を。
サイバー・マンデーは、サンクスギビングの週末が明けた月曜日のこと。以前は今ほど家庭のインターネット回線が速くなく、会社のネット環境の方がスムーズなことがほとんどでした。ブラック・フライデー直後のこの月曜日はにはネット通販でもクリスマス商戦がスタートしており、クリスマスに向けて会社からネット通販の注文をする人が多かったのがこの月曜日だったため、ブラック・フライデーに続いてネット通販の売り上げが伸びる月曜日ということで、サイバー・マンデーと呼ばれるようになったとか。
✔ おまけ② グリーン・マンデー
グリーン・マンデーとは12月の2週目の月曜日のこと。これは、「この日までに注文すればクリスマスまでに届きますよ」という日で、アメリカでは12月最大のセールの日と言われています。(今ならもっと後の注文でも普通に届きそうな気はしますが...)
元々は2007年にeBayが始めたセールだったとのこと。グリーンはお金のことを指していて、クリスマスを前に顧客はたっぷりとお金を使ってくれて、12月一番の書き入れ時という意味でグリーン・マンデーと命名したそうです。