同時通訳者山下えりかの今年の英語フレーズ2022 - Every Little Step

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 こんにちは、札幌在住の英語同時通訳者オンライン英語・通訳講師の山下えりかです。ご訪問ありがとうございます。

 

 2022年最後の記事になりました。ここ数年、毎年この日は「今年の英単語」を紹介する回でしたが、今年は単語ではなくフレーズにしました。

 

 私が選ぶ今年の英語フレーズは、"Every Little Step"です。

 

 直訳すると「すべての小さな一歩」で、「(結果に向けた)小さなことの積み重ね」という意味で使われます。「塵(ちり)も積もれば山となる」の「塵(ちり)」の部分といった感じでしょうか。

 

 今年は色々な積み重ねが実を結んだ年であったと同時に、小さな積み重ねの大切さを実感した年でもありました。2022年最後のこの記事では、"Every Little Step"のフレーズとともに1年を振り返ります。

 

 

✔ ドキュメンタリー映画"Every Little Step"


 "Every Little Step" は私のお気に入りのフレーズというだけでなく、大好きなドキュメンタリー映画のタイトルでもあります。

 

 

 

 

 これは2006年に再演されたブロードウェイ・ミュージカル『コーラスライン』のオーディションのドキュメンタリーです。既にご存知の方も多いと思いますが、『コーラスライン』本編も、ブロードウェイ俳優たちのオーディションを描いた作品です。

 

 本編『コーラスライン』のメイキングとも呼べる"Every Little Step" では、実際のオーディションと『コーラスライン』のストーリを交錯させながら、ブロードウェイでの成功を目指す俳優たちの、夢と現実、成功と挫折、希望と絶望、歓喜と悲哀を力強く伝えています。

 

 強い想いをもって何かを達成しようという経験をしたことがある人であれば、例えミュージカルに興味がなくても強く惹かれるものがある、人間の内側をえぐるように力強く訴えかけてくる作品です。

 

 実はこの作品は私のただのお気に入りというだけでなく、精神面のバロメーターでもあります。何度見ても強烈に内面を揺さぶられる作品なので、自分に自信がない時や精神面が不安定な時にはとても見られないのです。逆に良い仕事をしたと思えた時やその時の自分に自信がある時には必ず見たくなる作品です。

 

 ありがたいことにこの年末も、誇らしい気持ちでこの映画を観ることができました。満足できる1年を過ごせたことを改めて幸せに思います。

 

 

✔ 今年の"Every Little Step"


 2022年は、様々な驚きと新しい出会いに満ちた年でした。

 

 オンライン講座の中では特にリテンション講座が盛況でした。驚いたのはお申込みが英語学習者や英語通訳者を志す方たちにとどまらなかったことです。

 

 中国語、フランス語、スペイン語など英語以外の言語の通訳者を目指して勉強している方や手話通訳士の勉強をしている方々から「日本語のみのリテンションのレッスンをお願いできませんか」と複数のお問い合わせをいただき、とにかくやってみようと始めたことから、日本語のみのリテンション講座の開講につながりました。

 

 通訳の仕事では、以前からお付き合いのあったクライアント様からのご依頼が増え、そのご縁で新しい分野の仕事も経験することができました。新しい分野では戸惑うこともありましたが、クライアント様やこれまで少しずつ積み重ねてきたことに助けられ、クライアント様に納得していただける仕事ができたと思います。

 

 どちらもこれまでの小さな積み重ねが実を結んだと感じることのできた年でした。そしてその小さな積み重ねの中のどれが、いつ、どんな形で実を結ぶかは、本当にわからないものだなぁとしみじみ感じています。

 

 

✔ あるダンサーさんの"Every Little Step"


 この年末、あるきっかけでダンサーのTHE D SoraKiさんの動画に出会いました。先日南アフリカで開かれたダンスの世界大会で優勝されたとのこと。話題になっていたのはセミファイナル(準決勝)の動画です。

 

 

 この種のダンスに関する知識がほぼ無い私でも、その技術の高さに圧倒されましたし、最初に見た時には驚きで鳥肌が立ちました

 

 この動画視聴後、このセミファイナルでのダンスをSoraKiさんご本人が解説している動画をインスタで拝見しました。解説によると、この種の大会では使用曲はかかるまで分からないとのこと。そして、この時かかったダイアナ・ロスの"I’m Coming Out"は大好きな曲で、元気を貰っていた曲で、何度もかけていた曲で、曲を聴いた瞬間に「勝ったなと思った」とのことでした。本当に素敵な表情で、「気持ちよかった」と語られていました。

 

 彼のこのダンスを見ていると、この曲が、音が、リズムが、完全に彼の体の一部になっていることがよく分かります。どれだけ彼が日々の無数の小さな積み重ねを続けてきたかが分かります。その無数の"Every Little Step" が結実した最高の瞬間のひとつがこのセミファイナルだったのだなと感じました。

 

【参考】I'm Coming Out / Diana Ross 歌詞和訳&解説

 

 

✔ 運をも引き寄せる"Every Little Step"


 初めてこのSoraKiさんのダンスを見た時、私は既視感を覚えました。「ああ、私もこの気持ちよさを知っている」と。

 

 この大一番でSoraKiさんのお気に入りの曲がかかったのは偶然です。それも先攻でイントロのドラムのビートをダンスに活かせたことも偶然。人はこれを強運と呼び、「運も実力のうち」と言うのでしょう。

 

 それまでの「積み重ね」と「機会」が偶然合致する瞬間、人は最高のパフォーマンスをすることができます。くじ運のような努力ではどうにもならないものは別として、この「偶然」こそが一般的に語られる「運」だと私は解釈しています。そしてその偶然のタイミングは、人の力を超えた何かがもたらすものであるとも感じています。

 

 しかしこの「運」がやってきた時にそれを実力にできるのは、いつそれがやってきても結果を出せるように、常に地道な努力と準備を重ねてきた人だけなのです。

 

 そのため確かに「運も実力のうち」なのですが、「運を実力にできるのは真の実力がある人だけ」というのが真実であり、その運を引き寄せるのもまたその人の実力なのだと感じています。

 

 私にもこれまで何度か、日々の積み重ねが思わぬところで機会と出会い、最高に気持ちいい瞬間を経験してきました。

 

 一番印象的だったのは、直接的な成果に結びつくとは思わずに十数年間学び続けたことが全て実際の仕事に役立ち、話者の話がすべて自分で考えたことのように理解でき、感動で体が震えるほど最高の通訳ができた時のこと。この時は、知識、経験、技術、話者の話、会場の臨場感の全ての足並みが完璧に揃い、正しく上記のSoraKiさんのダンスのような一体感と高揚感、そして幸福感に包まれました。

 

 この「最高の瞬間」の程度は大小さまざまですが、何度かこれを経験して思うのは、やはり何よりも大切なのは"Every Little Step"であるということ。そしてこの「最高の瞬間」は、報われる保証のない努力を自分を信じて続けられた人にだけ与えられる、人知を超えた何かからのギフトのようなものだということです。

 

 

✔ おわりに


 2023年も、焦らず、諦めず、驕らず、怠けず、日々"Every Little Step"を積み重ねて行こうと思います。

 

 今年も当サイトとブログをご訪問くださり、誠にありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

 それでは皆様、良いお年をお迎えください

 

 


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