こんにちは、英語同時通訳者でオンライン英語・通訳講師の山下えりかです。いつもご訪問ありがとうございます。
4月も後半になり、このブログの読者様の中には、通訳学校の授業がスタートしたという人もいることでしょう。サイマル・アカデミーで通訳訓練を受けていた当時の自分も含め、多くの通訳志望者にとって悩みの種なのがリテンションです。
「聞いた話を一言一句正確に記憶して(リテンション)、一言一句正確に再現する(リプロダクション)」は、通訳の基礎技術です。正確な通訳ができるかどうかはこの技術の精度にかかっていると言っても過言ではないほど重要な、通訳者の必須スキルです。
リテンションを高めるにはリプロダクションの練習あるのみですが、それでも知っておくと便利(かもしれない)なコツのようなものが存在するので、今回はそれをご紹介します。
✔ コツは意味のかたまりを意識すること
話を記憶する時のコツとは、「意味のかたまりごとに区切りながら記憶する」ことです。中学や高校の国語の授業で習った、「文節」をイメージすると分かりやすいと思います。
話を意味のかたまりごとに区切りながら聞くことで文章の構成が分かりやすくなり、情報の整理がしやすくなるため、記憶もしやすくなります。またそうすることで前後の情報がごちゃまぜになり混乱することを防げるようになりますし、「ひとつ分からないとそこで止まってしまいそこから先を全部聞き逃す」という事態を回避できるようになります。
✔ まずはスラッシュを入れてみよう
「意味のかたまり」を意識できるようになるにはまず、スラッシュリーディングから始めましょう。スラッシュリーディングと言うと英語でやるものと思うかもしれませんが、初心者は日本語から始めるのがおすすめです。普段何気なく使っている母語だからこそ、改めて向き合い、情報と文構造を整理する習慣をつけ、理解を深める努力が重要です。
ニュースのフレーズを例に実際にスラッシュを入れてみます。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。
ここに意味のかたまりごとにスラッシュを入れてみます。
ウクライナの各地で/ロシア軍とウクライナ軍が/戦闘を続けていて/大勢の市民が/国外へ避難しています。
「意味のかたまりごとに記憶する」とはつまり、このスラッシュの切れ目ごとに記憶するということです。日本語に慣れてきたらぜひ英語でもトライしてください。
✔ 慣れてきたら音声を使ってリテンション&リプロダクション
意味のかたまりごとにスラッシュを入れることに慣れたら次は、音声を聞きながら頭の中で分にスラッシュを入れて、リテンション&リプロダクションの練習をしましょう。リテンションの自主練習方法は下記の記事で解説しているのでご参照ください。
【参考】通訳の必須スキル、リテンション(短期記憶保持力)を自主練習で強化!実践方法と練習用動画を紹介
✔ おわりに
最初に書いた通り、リテンションを高めるにはリプロダクションの練習あるのみです。しかしそれまで全くやったことのないリプロダクションの練習ははじめのうちは「できない」の連続で、心が折れそうになるというのもよくある話。訓練時代の私もそうでした。
はじめの一歩で諦めてしまわないためにも、まずはリテンションの前段階である「情報を整理しながら話を聞く」というスキルを身につけるため、日英両言語でのスラッシュリーディングを試してみてください。
次の記事:リテンション(短期記憶保持力)16時間の法則 - 通訳に必要な記憶力はどれくらい練習すれば身につく?
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【About Erika】
職業:英語同時通訳者(個人/フリーランス)
現住所:札幌市
留学歴:3年(アメリカ)
特技:柔道(初段)、ピアノ(弾き語り)
趣味:料理、お菓子作り、食器屋巡り